第3393条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

 

 

 

 

 

-辞めるか、移るか

 

 

自らの成長のためには、自らに適した組織において、自らに適した仕事につかなければならない。そこで問題になるのは、「自らの得るべきところはどこか」ということである。この問いに答えを出すには、自らがベストを尽くせるのはいかなる環境かを知らなければならない。

 

 

学校を出たばかりでは、自らのことはほとんど何も分からない。大きな組織のほうが仕事ができるのか、小さな組織のほうができるのかは分からない。人と一緒に仕事をするほうがよいのか、ひとりのほうがよいのか、不安定な状況のほうがよいのか、逆なのか。時間の重圧があったほうがよいのか、ないほうがよいのか。迅速に決定するほうか、しばらく寝かせないとだけなほうか。

 

 

最初の仕事はくじ引きである。最初から自らに適した仕事につく確立は高くない。得るべきところを知り、向いた仕事に移れるようになるには年数が必要である。

 

 

われわれは気質や個性を軽んじがちである。だが気質や個性は、訓練によって容易に変えられるものではないだけに、重視し、明確に理解することが必要である。

 

 

決定したことを完全に理解しなければ行動できない人は、戦場のような仕事には向かない。右サイドが崩れたとき、将校は、退却すべきか否かを八秒以内に決定しなければならない。もちろん決定の時間を要する者であっても、そのようなときには無理にでも決定するだろう。だがそれでは、せっかくの決定も間違ったものとなる公算が大きい。