第3383 冊 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

 

 

 

 

一〇回のうち九回は、不安に感じていたことが杞憂であることが明らかになる。しかし、一〇回に一回は、重要な事実を見落としていたり、初歩的な間違いをしたり、まったく判断を間違っていたりしたことに気づく。一〇回に一回は、突然夜中に目が覚め、シャーロック・ホームズのように、重要なことは、「バスカヴィルの犬が吠えなかった」ことだと気づく。

 

 

とはいっても、決定を延ばしすぎてはならない。数日、せいぜい数週間までである。それまでに神霊が話しかけてこなければ、好き嫌いにかからわず、精力的かつ迅速に決定しなければならない。人は、好きなことをするために報酬を手にしているのではない。なすべきことなすために、成果をあげる意思決定をするために報酬を手にしている。

 

 

今日意思決定は、少数のトップだけで行うべきものではない。組織に働くほとんどあらゆる知識労働者が、なんらかの方法で、自ら意思決定のプロセスにおいて積極的な役割を果たさなければならなくなっている。

 

 

かつては、トップマネジメントというきわめて小さな機関に特有の機能だったものが、今日の社的機関、すなわち大規模な知識組織においては、急速に、あらゆる人の、あらゆる組織単位の、日常とまではいかなくとも通常の仕事となりつつある。今日では、意思決定をする能力は、知識労働者にとって、まさに成果をあげる能力そのものである。