第3391条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

 

 

 

 

 

したがって、「上司は何がよくできるか」「何をよくやったか」「強みを生かすためには、何を知らなければならないか」「成果をあげるためには、私から何を得なければならないか」を考える必要がある。上司が得意ではないことをあまり心配してはならない。

 

上司もまた人であって、それぞれの成果のあげ方があることを知らなければならない。上司に特有の仕事の仕方を知る必要がある。単なる癖や習慣かもしれない。しかし、それらは実在する現実である。人には、読む人と聞く人がいる。例外的に、フランクリン・ルーズベルトリンドン・ジョンソン、ウィストン・チャーチルのように、話をしながら相手の反応を捉えて情報を得るという人がいる。読むことと聞くことの両方を必要とするタイプもいる。これは、法廷弁護士に理想的なタイプである。

 

 

読む人に対しては、口で話しても時間の無駄である。彼らは、読んだあとでなければ、聞くことができない。逆に、聞く人に分厚い報告書を渡しても紙の無駄である。耳で聞かなければ、何のことか理解できない。

 

アイゼンハワーのように、一ページの要約が必要な人がいる。あるいは、あらゆることについて、六〇ページにわたる数字のデータを見たがる人がいる。意思決定の準備のために、初めから関与したがる人がいる。逆に、時期が来るまでは何も聞きたくないという人がいる。

 

上司の強みを考え、その強みを生かすには、問題の提示にしても、何をではなく、いかに、について留意しなければならない。何が重要であり何が正しいかだけでなく、いかなる順序で提示するかが大切である。政治性が意味をもつ仕事において、上司の強みが世辞的な手腕にあるならば、まさにその政治的な側面から最初に説明する必要がある。上司は、何についての問題であるかを容易に理解し、その強みを存分に理解する。

 

 

誰もが人のことについては専門家になれる。本人よりもよく分かる。したがって、上司に成果をあげさせることは、かなり簡単である。強みに焦点を合わせればよい。上司の強みを中心に置くことほど、部下自身が成果をあげすくなることはない。