第3389冊 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

 

 

 

 

主たる理由は、目の前の人事が、人間の配置ではなく仕事のための配置になっているからである。したがって、ものの順序として、仕事からスタートしてしまい、次の段階として、その仕事に配置すべき人間を探すということになるからである。そうなると、もっとも不適格な人間、すなわちもっとも変哲のない人間を探すという誤った道をとりやし。結果は、凡庸な組織である。

 

 

そのような事態への対策として、もっとも喧伝されている治療法が、手元の人間に合うように、職務を構築しなおすことである。しかし、きわめて単純な小さな組織を別として、そのような治療は、病気よりも害が大きい。仕事は客観的に設計しなければならない。人の個性ではなく、なすべき仕事によって決定しなければならない。

 

仕事の範囲や構造や位置づけを修正すれば、必ず組織全体に連鎖反応が及ぶ。組織において、仕事あたがいに依存関係にあり、連動している。ひとりを一つの仕事につけるために、あらゆる人の仕事や責任を変えることはできない。

 

 

上司は部下の仕事に責任をもつ。部下のキャリアを左右する。したがって、強みを生かす人事は、成果をあげるための必要条件であるだけでなく、倫理的な至上命令、権力と地位に伴う責任である。弱みに焦点を合わせることは、間違っているだけでなく、無責任である。上司は、組織に対して、部下一人ひとりの強みを可能なかぎり生かす責任がある。何にもまして、部下に対して、彼らの強みを最大限に生かす責任がある。