第3385冊 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

 

 

 

 

-強み重視の人事

 

 

成果をあげるためには、人の強みを生かさなければならない。弱みを気にしすぎてはならない。利用できるかぎりのあらゆる強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自らの強みを総動員しなければならない。強みこそが機会である。強みを生かすことは組織に特有の機能である。

 

組織といえども、人それぞれがもっている弱みを克服することはできない。しかし組織は、人の弱みを意味のないものにできる。組織の役割は、人間一人ひとりの強みを、共同の事業のための建築用ブロックとして使うところにある。

 

 

成果をあげるためには、強みを中心に据えて異動を行い、昇進させなければならない。人事においては、人の弱みを最小限に抑えるよりも、人の強みを最大限に発揮させなければならない。

 

 

リンカーン大統領は、グラント将軍の酒好きを聞いたとき「銘柄が分かれば、ほかの将軍たちにも贈りなさい」といったとう。ケンタッキーとイリノイの開拓地で育ったリンカーンは、飲酒の危険は十二分に承知していた。しかし北軍の将軍の中で、常に勝利をもたらしてくれたのはグラントだった。事実、彼を最高司令官に任命したことが、南北戦争の転換点となった。酒好きという弱みではなく、戦い上手という強みに基づいて司令官を選んだがゆえに、リンカーン人事は成功した。