第3386冊 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

 

 

 

 

人の弱みに配慮して人事を行えば、うまくいったところで平凡な人事に終わる。強みだけの人間、完全な人間、完成した人間を探したとしても、結局は平凡な組織をつくってしまう。

 

 

大きな強みをもつ人人は、ほとんど常に大きな弱みをもつ。山があるところには谷がある。しかも、あらゆる分野で強みをもつ人はいない。人の知識、経験、能力の全領域からすれば、偉大な天才も落第生である。申し分のない人間などありえない。そもそも何についても申し分がないかも問題である。

 

 

できることではなく、できないことに気を取られ、弱みを避けようとする者は弱い人間である。おそらくは、強い人間に脅威を感じるのであろう。しかし、部下が強みをもち、成果をあげることによって苦労させられた者などひとりもない。

 

 

アメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが自らの墓碑銘に選んだ「おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る」との言葉ほど、大きな自慢はない。まさに、これこそが、成果をあげるための処方である。もちろん、カーネギーの部下たちが優秀だったのは、彼が部下の強みを見出し、それを仕事に適用させたからだった。彼ら鉄鋼業の人材は、それぞれがそれぞれ特定の分野において、特定の仕事において優秀だった。もちろん、もっとも大きな成果をあげたのカーネギーだった。