第3387冊 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

 

 

 

 

リー将軍にまつわる話は、人の強みを生かすことの本当の意味を教えてくれる。あるとき、部下の将軍のひとりが命令を無視し、リーの戦略を台なしにした。それが初めてではなかった。ふだんは感情を抑えるリーが怒った。しかし、落ち着いたところで、副官が「解任します」とか聞いたところ、驚いたという顔で「ばかなことをいうな。彼は仕事ができる」といったという。

 

 

人に成果をあげさせるためには、「自分とうまくやっていけるか」を考えなくてはならない。「どのような貢献ができるか」を問わなければならない。「何ができないか」を考えなくてはならない。「何を非常によくできるか」を考えなくてはならない。特に人事では、一つの重要な分野における卓越性を求めなければならない。

 

 

 強みをもつ分野を探し、それを仕事に適用させなければならないことは、人間の特性からくるところの必然である。全人的な人間や成熟した人間を求める議論には、人間のもっとも特殊な才能、すなわち一つの活動や成果のためにすべてを投入できるというのく力に対する妬みの心がある。それは、卓越性に対する妬みである。人の卓越性は、一つの分野、あるいはわずかの分野において実現されるのみである。

 

強みに焦点を合わせることは、成果を要求することである。「何ができるか」を最初に問わなければ。真に貢献できるものよりも、はるかに低い水準に甘んじざるをえない。成果をあげることを初めから免除することになる。致命的ではなくとも、破壊的である。当然、現実的でもない。

 

 

真に厳しい上司とは、つまるところ、それぞれの道で一流の人間をつくる人である。彼らは、部下がよくできるはずのことから考え、次に、その部下が本当にそれを行うことを要求する。