第3350冊目 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)


  • 成果を大幅に改善する方法


仕事や成果を大幅に改善するための唯一の方法は、成果をあげるための能力を向上させることである。


もちろん、際だって優れた能力をもつ人を雇うことはできる。あるいは際だって優れた知識をもつ人を雇うこともできる。だが、いかに努力したとしても、能力と知識の向上に関しては、大幅な期待をすることはできない。もはや、これ以上は不可能か、あるいは少なくとも効果のあまりないような限界に達している。新種のスーパーマンを育てることはできない。現在の人間をもって、組織をマネジメントしなければならない。


経営管理者に関する本は、明日の経営者像として万能の人間を描く。それらによれば、分析においても、意思決定においても、非凡な才能をもたなければならないとされる。同時に、人と協力して働くことに長け、組織や力関係を熟知し、計数に明るく、芸術的な洞察力や創造的な想像力を備えていなければならないという。つまるところ、あらゆる分野において天才的な才能を発揮できる人を求める。


そのような人は、いつの世にも稀である。人類の歴史は、いかなる分野においても、豊富にいるのは無能な人のほうであることを示している。われわれは、せいぜい一つに分野に優れた能力をもつ人を組織に入れられるだけである。一つの分野に優れた能力をもつ人といえども、他の分野については並みの能力しかもたない。


したがってわれわれは、一つの重要な分野で強みをもつ人が、その強みをもとに仕事を行えるよう、組織をつくることを学ばなければならない。仕事ぶりの向上は、人間の能力の飛躍的な増大ではなく、仕事の方法の改善によって図らなければならない。知識についても同じことがいえる。優れた知識を大量にもつ人を大量に手に入れようとしても、そのために必要な費用が、期待できる成果に比べて高すぎる。