第3390冊 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

 

 

 

 

-上司の強みを生かす

 

 

成果をあげるためには、上司の強みも生かさなければならない。企業、政府機関、その他あらゆる組織において、「上司にどう対処するか」で悩まない者はいない。答えは簡単である。成果をあげる者ならば、みな知っていることである。上司の強みを生かすことである。

 

これは、世渡りの常識である。現実は企業ドラマとは違う。部下が無能な上司を倒し、乗り越えて地位を得るなどということは起こらない。上司が昇進できなければ、部下はその上司の後ろで立ち往生するだけである。たとえ上司が無能や失敗のために更迭されても、有能な次席があとを継ぐことは少ない。外から来る者があとを継ぐ。そのうえその新しい上司は、息のかかった有能な若者たちを連れてくる。したがって優秀な上司、昇進の速い上司をもつことほど、部下にとって助けとなるものはない。

 

 

しかも、上司の強みを生かすことは、部下自身が成果をあげる鍵である。上司に認められ、活用されることによって、初めて自らの貢献に焦点を合わせることが可能になる。自らが信じることの実現が可能になる。

 

 

もちろんへつらいによって、上司の強みを生かすことはできない。なすべきことから考え、それを上司にわかる形で提案しなければならない。上司も人である。人であれば、強みとともに弱いをもつ。しかし上司の強みを強調し、上司が得意なことを行えるようにすることによってのみ、部下たる者も成果をあげられるようになる。上司の弱みを強調したのでは、部下の弱みを強調したときと同じように、意欲と成長を妨げる。