第3372冊 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

 

 

 

 

-時間を無断しているヒマはない

 

 

成果をあげるための秘訣を一つだけあげるならば、それは集中である。成果をあげる人は、もっとも重要なことから始め、しかも、一度に一つのことしかしない。

 

 

集中が必要なのは、仕事の本質と人間の本質による。いくつかの理由はすでに明らかである。貢献を行うためにの時間よりも、行わなければならない貢献のほうが多いからである。行うべき貢献を分析すれば、当惑するほど多くの重要な仕事が出てくる。時間を分析すれば、真の貢献をもたらす仕事に割ける時間はあまりに少ないことがわかる。いかに時間を管理しようとも、時間の半分以上は、依然として自分の時間ではない。時間の収支は、常に赤字である。

 

 

上方への貢献を焦点を合わせるほど、まとまった時間が必要になる。忙しさに身を任せるのではなく、成果をあげることに力を入れるためには、継続的な努力が必要になる。成果を得るためのまとまった時間が必要となる。真に生産的な半日、あるいは二週間を手に入れるためには、厳しい自己管理と、ノーといえるだけの不動の決意が必要である。

 

 

自らの強みをいかそうとすれば、その強みを重要な機会に集中する必要を認識する。事実、それ以外に成果をあげる方法はない。二つはおそか、一つでさえ、よい仕事をすることはむずかしいという現実は、集中を要求する。人には驚くほど多様な能力がある。人はよろず屋である。だが、その多様性を生産的に使うためには、それらの多様な能力を一つの仕事に集中することが不可欠である。あらゆる能力を一つの成果に向けるためには集中するしかない。

 

 

 

もちろん、いろいろな人がいる。同時に二つの仕事を手がけ、テンポを変えていったほうがよくできる人がいる。だがそのような人でも、二つの仕事のいずれにおいても成果をあげるためには、まとまった時間が必要である。ただし、三つの仕事を同時に抱えて卓越した成果をあげる人はほとんどいない。