第3373冊 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

 

集中は、あまりに多くの仕事に囲まれているからこそ必要となる。なぜなら、一度に一つのことを行うことによってのみ、早く仕事ができるからである。時間と労力と資源を集中するほど、実際にやれる仕事の数や種類は多くなる。これこそ困難な仕事をいくつも行う人たちの秘訣である。彼らは一時に一つの仕事をする。その結果、ほかの人たちよりも少ない時間しか必要としない。

 

 

かえって、いかなる成果もあげられない人のほうがよく働いている。成果のあがらない人は、第一に、一つの仕事に必要な時間を過小評価する。すべてがうまくいくものと楽観する。だが誰もが知っているように、うまくいくものなど一つもない。予期しないことが、常に起こる。しかも、予期しないことは、ほとんど常に、愉快なことではない。したがって、成果をあげるためには、実際に必要な時間よりも余裕を見なければならない。

 

 

第二に、彼は急ごうとする。そのため、さらに遅れる。成果をあげる者は、時間と競争しない。ゆっくり進む。

 

 

第三に、彼らは同時にいくつかのことをする。そのため手がけている仕事のどれ一つも、まとまった時間を割けない。いずれか一つが問題にぶるかると、すべてがストップする。

 

 

成果をあげる人は、多くのことをなさなければならないこと、しかも成果をあげなければならないことを知っている。したがって、自らの時間とエネルギー、そして組織全体の時間とエネルギーを、一つのことに集中する。もっとも重要なことを最初に行うべく、集中する。