第2082冊目 世界一やさしいドラッカーの教科書 浅沼宏和 (著)
- 作者: 浅沼宏和
- 出版社/メーカー: ぱる出版
- 発売日: 2011/06/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- メンバーの強みと役割分担
組織やチームが、どれだけの成果をあげることができるのかは人材で決まります。
ドラッカーは「組織がその人材を超えて立派な仕事をすることはできない」といっています。
リーダーは、メンバーの能力をより多く引き出して、成果に結びつけるように努めなければなりません。
そのために重要なのが「強みを生かす」ことです。
強みを生かすことは個人が成果をあげるためにも重要な習慣でした。
組織やチームの場合、それぞれの強みを生かすことでメンバー全員の成果を合わせたよりも、はるかに大きな成果をあげるようにマネジメントする必要があります。
大きな強みを持つほとんどの人が大きな弱みを持っています。
組織やチームは人の弱みを克服することはできませんが、人の弱みをおぎなうことができます。
リーダーはメンバーの強みを生かすことで、全体の成果を大きくする責任を負っているのです。
組織やチームのメンバーの仕事は客観的に設計する必要があります。
つまり、チームのメンバーの個性に合わせて設計するのではないということです。
仕事を客観的に設計するとは、「この仕事は何をするべきものなのか」を明確にすることです。
ドラッカーは、人に合わせて仕事を設計しようとするならば、組織は情実となれ合いに支配されるようになる、といっています。
組織やチーム内での人間関係も、仕事を中心に構築する必要があるのです。
また、それによって組織の多様性も確保できるのだとドラッカーはいっています。
組織やチームがより大きな成果をあげるためには、多様性と公正さがともに必要になります。
そのような人間関係は情実やなれ合いとは無縁のものなのです。
強みに基づいてメンバーの役割分担を決めるための4つの原則をまとめます。
1、仕事が適切に設計されている
仕事は人に合わせるのではなくて、客観的に設計しなければなりません。
しかし、その設計が適切に行われているかが重要です。
ドラッカーは「不可能な仕事、人にはできない仕事をつくってはならない」といっています。
客観的に作られており、筋も通っているのに、誰に任せてもうまくできない仕事が「不可能な仕事、人にはできない仕事」に当たります。
そのような仕事は、例外的な人の特性に合わせて作られている可能性があるのです。
普通の人では、めったに持ち合わせていない特性を要求する仕事を作ってはいけないのです。
2、多くのものを要求する仕事にする
すべての仕事は、多くを要求する、大きなものとして設計しなければならないというドラッカーはいっています。
最も単純な仕事さえ、そこで要求されるものは必ず変化していきます。
しかも仕事の内容は徐々に変化するばかりではなく、突然変化する場合も多いのです。
すると仕事と人の適合性は失われてしまし、急速に不適合へと変わるのです。
こうしたことを想定して、「仕事はそもそものはじめから、大きくかつ多くを要求するものとして設計するべきだ」とドラッカーはいうのです。
大きな成果を要求する仕事を任されることは、その人に挑戦させることによって、能力を活用するということです。仕事を通じて能力開発を行うのです。
能力を生かしきるような、大きな仕事を当たることはリーダーの務めです。
3、その人にできる仕事であること
仕事を割り当てることは、その人の強みをもとにして決める必要があります。強みとはこれまで挙げてきた成果によって判断するものです。
ただし、「潜在能力を重視し過ぎてはいけない」とドラッカーはいっています。
強みに基づいて適切な仕事を割り当てなければなりません。
仕事を大きなものにしなければならなり理由もここにあるのです。
仕事が小さければ、あげることのできる成果も小さくなります。
人はあげた成果でしか評価することができないわけですから、小さな仕事しか与えられていない人は評価を高くすることができないのです。
したがって、与えられるべき仕事とはその人の強みを生かせるものであるが、これまであげてきた成果を超えるレベルものでなければなりません。
これは決して潜在能力を重視し過ぎることではないのです。
4、その人の弱みを我慢できるか
個人の強みを生かすためには、弱みは我慢しなければなりません。
「この人は強みを持っているか」「その強みは仕事と関係しているか」「その強みを生かせが大きな成果をあげることができるか」という問いの答えがイエスであるのなら、その人に仕事を任せたほうがよいのです。
弱みを気にすることは、機会ではなくて問題に焦点を当てていることになります。
リンカーン大統領は、酒好きのグラント将軍を司令官に選びました。酒好きという弱みではなく、戦い上手という強みに焦点を当てたのです。
大きな成果は問題ではなくて機会によってもたらされます。
弱みは、それが強みを発揮することを妨げる場合にだけ気にすればよいのです。
そのような場合であっても、仕事を大きくして機会を与えることで乗り越えさせるように務めるのがリーダーの役割です。
リーダーにとって人事は賭けのようなものです。
しかし、何ができるかを中心に人事を行うことで、少なくともそれが、合理的な賭けとなる、とドラッカーはいっています。
「部下の弱みに焦点を合わせることは、間違っているばかりか無責任である。上司たる者は、組織に対して、部下一人ひとりに強みを可能な限り生かす責任がある。部下に対して彼らの強みを最大限に生かす責任がある」
部下の強みを生かし、その目を成果に向けさせることは上司の責任です。
ところが、多くのビジネスパーソンは、成果ではなく自分の努力を気に留めています。
「自分はこれだけの成果をあげた」と考えるのではなく「自分はこんなにがんばったんだ」と考える傾向があるということです。
このように成果ではなく努力に焦点を合わせるようになると、自分が果たすべき責任ではなくて、権利のほうが気になるようになります。
そうすると、結果的に、本当の成果があげられなくなってしまうのです。
「貢献に焦点を合わせることによって、自らの狭い専門やスキルや部門ではなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる」
組織やチームにおいては、努力ではなく、成果への貢献を中心に考えなければなりません。
リーダーはメンバーをそのように仕向けていく責任を負っているのです。