第2083冊目 “惜しい部下"を動かす方法 ベスト30 大塚 寿 (著)


“惜しい部下

“惜しい部下"を動かす方法 ベスト30


顔つき、しぐさ……言葉以外の情報を持つ効果を考察した『人は見た目が9割』(竹内一郎)は刊行直後から大きな反響を呼びました。「9割」という数字はともかくとして、人が「見た目の印象」に大きく左右されることに議論の余地はありません。


これは職場でも一緒です。


つまり、「社会人は見た目が9割」なのです。


前にも触れましたが、服装、髪型、身だしなみなどに難がある人は、いいヤツであっても、なぜか好かれない部下の典型です。


最近の20代には、「清潔男子」という言葉が象徴しているように、眉毛まで整えたコギレイな人も増えています。それだけに、無頓着な服装、手入れされていない髪、身だしなみを意識しない風貌でいると、余計に目立って、相手に不快な印象を与えます。


いくら仕事ができる人でも、襟足のフケや無精ひげ、擦り切れてしまった革靴では風采が上がらず、こと異性から嫌われてしまうでしょう。


しかし、そんな部下に「身だしなみに注意しろ」といくら指摘しても、生まれつきの不精者ゆえに、自分の力ではなんともできないものです。「めんどうくさい」というより、そうした意識がそもそも欠落しているのかもしれません。


ならば、その欠落した意識や知識を、上司がそれとなく補ってあげましょう。


「社会人は見た目が9割だぞ」と、身だしなみが他人から日々評価されていることを伝えた上で、具体的な改善策を指導するのです。


「スーツの上下、シャツはプレスされたもの」が身だしなみですが、その一歩手前の「スーツにしわがよわないように、脱いだら必ずハンガーにかける」というちょっとした改善案のほうが効果的だったりします。


同様に、「シャツの袖口あ襟足の汚れに気をつけろ」というより、「シャツは10枚以上買って、週1回クリーニングのローテーションをすればいい」のほうが効果が上がるはずです。


スーツのときに白い靴下をはいてはいけないこと、革靴は毎日磨くこと、万一のために職場にも爪切りや髭剃りを用意しておくこと等々、具体策を指導する。こうした細かいアドバイスを重さねると、不思議なことに「身だしなみを整える、意識」がつくられるものです。


恋愛コンサルタントや婚活コンサルタントに聞いた話なのですが、恋人ができないと悩んで相談にくる人に、容姿に難のある人は皆無とのこと。


その代わり、100%の人が、服装と身だしなみに難のある人だそうです。見た目は普通か、それ以上なのに、服装と身だしなみに問題があって、ずっと交際相手のいない人生を歩んできたというわけです。


そのためコンサルタントが最初に指導するのは、ファッションと髪型です。本人に似合いそうな服を見つけるために買い物に同行、美容院にも一緒に出かけてスタイリストと相談して髪型を決めるそうです。


まさに「Befor After」の世界で、服装の上から下までが変わり、髪型まで変身します。すると、本人の態度まで明るく変わってくるといいます。


いってみれば、ファッションと髪型を変えるだけのことです。たったそれだけのことでも、みな自信を持つようになるので、恋愛にも積極性が出て、ほとんどの人が恋活を成就させるというのです!


この結果を応用したい手はありません。最低でも、「身だしなみで周りから好かれない」という問題を解決できるのですから。


オシャレ好きな人であれば、好みのブランドショップの店員にあれこれコーディネートを相談するのでしょうが、元来無頓着な人にとっては、その店員が煩わしかったり、ブランドショップに気後れするものです。そして、そのめんどうくささが手伝って、身だしなみを整える気が起こっていないのかもしれません。


かくいう私も結婚するまでは、ファッションには無頓着だった一人です。何を隠そうそれまでは、散髪は近所の床屋で済ませていました。スーツやコートの調達は、先輩や上司から数十着というレベルでお古を譲り受けて終わりです。


ところが、家内が広告代理店の営業ウーマンでアパレル業界を担当していて、ファッションにうるさかったために、徐々に矯正されていきました。誰かと一緒に買い物に行った結果の「Befoe After」の効果を身をもって体験しているのです。


ヘアスタイルはともかくとして、ファッションに関しては、身近な詳しい人やオシャレ好きの人に一緒に選んでもらうだけで、全然違うレベルのものになります。


「無頓着なレベル」から「周りの人からオシャレと言われるレベル」にまで、5ランクぐらいすぐに上がってしまうものです。


「社会人は見た目が9割」――ファッション、ヘアスタイルに難のある部下がいたとしたら、具体的に指導して「オシャレな男子・女子」にしてしまいましょう。


「社内の人を引きつける力」がガラリと変わり、きっと仕事の質まで変わってくるはずです。