第3110冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著),‎ マーヴィン カーリンズ (著),‎ 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 体で最も正直な部分


ボディー・ランゲージを読み取ろうとするとき、相手の顔から観察を始め、上から下へと焦点を移動させていく人が多い。ところが、虚勢を張って本心を隠すために一番よく利用されるのが顔だ。だから私のアプローチはまったく逆になる。FBIで無数の事情聴取をこなしてきた私は、最初に容疑者の足と脚に注目し、そこから少しずつ観察の対象を上に移していって、最後に顔の表情を読み取ることを覚えた。正直さという点について言うなら、足から頭に移るにつれて誠実さは薄れていく。残念なことに、最近のものも含めてここ六〇年間の警察の資料を見ると、事情聴取や人の心の解説では顔に注目することばかりで強調される。さらに悪いのは、参考人がテーブルや机の下に足と脚を隠したままで質問に答えるのを許していることだ。


ちょっと考えてみれば、顔の表徐に人をだます性質があるのは当然だろう。私たちが顔でウソをつくのは、小さいころからそう教えられて育ったからだ。子どもが目の前に置かれた料理に正直にいやな顔をすれば、「そんな顔をしないで」と、親に一喝される。「従兄弟たちが来ている間、少なくとも楽しそうな顔をしておいてね」と親から言われ、作り笑いを覚える――。親は――そして社会は――社会の調和のために、要するに顔で本心を隠すようにと、人を欺き、ウソをつくようにと、子どもたちに教えているのだ。そんなわけだから、ウソがとても上手になる傾向があるのは当然だろう。実際、誰でもみんな上達しているので、親戚の集まりで楽しそうな顔をしていれば、心の中では遠い親戚を早く帰す策を練りながら、いかにも大好きだという表情に見える。


考えてもみよう。もし顔の表情を自由にコントロールできないなら、「ポーカーフェイス」などという言葉に意味があるだろうか。こうして私たちは、いわゆる「よそゆきの顔」の作り方を身につけているのだが、自分の足や脚に注意を払う人はほとんどいない。まして他人の足や脚となると、もっときにしていない。緊張、ストレス、恐怖、心配、警戒、退屈、不安、幸福、歓喜、苦痛、はにかみ、遠慮、謙虚、当惑、自信、卑屈、憂鬱、無気力、遊び心、肉欲、怒り――これらの感情はすべて、足と脚を通して外に表れる。意味ありげにそっと触れ合う恋人同士の脚、見知らぬ人に会った少年の恥ずかしそうな足、怒りをあらわにした立ち姿、赤ちゃんの誕生を待ちわびている父親の緊張した足取り。どれも心の状態を表すシグナルで、間近ですぐに見られるものばかりだ。


周囲の世界を解読して、人々の行動を正しく解釈したいなら、足と脚を観察しよう。得られる情報は実に目覚ましく、正直なものだ。ノンバーバルの情報を収集する際には、下肢を全身の重要部分とみなさなければならない。