第3160冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著),‎ マーヴィン カーリンズ (著),‎ 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 強調


私たちは話しながら、ひじ、頭、手、腕、胴体、脚、足などの体のさまざまな部分を自然に利用して、心から感じている点を強調する。人が純粋な気持ちをもっているとき、強調は普遍的なものなので、それを観察するのが大切だ。強調は大脳辺縁系が会話に関与するもので、どれだけ強く感じているかを周囲に伝える方法になる。その逆に、人が話していることを辺縁系が裏付けていない場合には、強調が薄れるか、まったくなくなる。ほとんどの場合は、私の経験やほかの研究から、ウソをつく人は強調しないことがわかっている。ウソをつく人は何を言ってどう欺くかを決めるために知的判断をする脳を利用しており、そのウソをどう見せるかまでは考えていない。ウソをつかざるを得ないとき、ほとんどの人は、日常の会話にどれだけ多くの強調やアクセントが加わっているかを考えない。ウソつきが答えをでっち上げると、強調が不自然だったり、遅れているように見えたりする。適切な場所をほとんど強調しなかったり、あまり大切でない箇所ばかり選んだりする。


私たちは、言葉とノンバーバルの両方を強調している。言葉の上での強調には、声質、ピッチ、トーン、繰り返しを用いる。ノンバーバルでも強調していて、会話や聴取で真実とウソを見分けるようにするには、そうした行動のほうが言葉より正確で役に立つことがある。話ながら手を使う人は、手ぶりによって言葉を区切り、強調するために机をドンと叩くことさえある。また指先を動かしたり、指先で何かに触れたりして、強調する人もいる。手の動作は正直な話、考え、本当の気持ちを補足する。眉を上げて目を大きく見開くのも、言いたいことを強調する方法になる。


さらに、体を前に傾けて関心を示す場合も、強調の表れだ。大切な、または感情を込めたいポイントを示すとき、足の前半分に体重を乗せるようにして伸びがあり、重力に逆らう姿勢をとることもある。座っている場合には、膝を一瞬上げて重要な点を強調したり、膝を叩いて溢れる感情を示したりする。重力に逆らう身振りは強調の印で、ウソをつく人がほとんど見せない、本物の感情だ。


反対に、話している内容に重きを置いていないときや、本気で約束できないときには、口を手で覆いながら話したり、表情を抑えたりすることがある。人は、言っていることに全責任をもてないと、表情を硬くするだけでなく、その他の動きも抑えて、引き下がる動作をする。ウソをついている人は、指を顎にあてたり頬をなでたりと、考えながら話しているかのように、物思いにふける様子を見せることが多い。これは、要所要所を強調しながら話す正直な人と、正反対の態度だ。ウソをついている人は、話していることとそれがどう受け取られているかを、時間をかけて見極める。それは正直な行動には見られない点だ。