第2676冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • 練習のための人材を選ぶ


私たちの仕事で新たに教師を採用するときには、模擬授業を見せてもらう必要があることに、早い段階で気づいた。新事実を発見したように言うのはばかげているかもしれないが、アメリカの学校の大半は、採用前に候補者の授業を見学しない。ホイットニー・ティルソンの「学校改革」と題するブログによると、ロサンゼルス市統一学区で2010年に採用された教師のうち、採用前に模擬授業を求められたのはたったの13パーセントだった。外科医を100人採用するときに、13人の手術の様子しか見ないのと同じことだ。


ただし、大切なのは候補者の模擬授業での教え方ではない。私たちはそのことにも気づいた。いちばん関心を持って見るようになったのは、候補者がフィードバックに応える能力だった――フィードバックをどう受け止めて、自分の指導にどう取り入れるか。フィードバックでは、授業の一部をくり返して、スクールリーダーと練習するように候補者に求めることが多い。模擬授業で教師がやることは重要だが、フィードバックに対する反応を確認することはさらに重要なのだ。


最近、ケイティともうひとりの教師指導者が模擬授業のあとで候補者とフィードバックセッションをおこなった。練習のために、教師指導者がうつむいて座っている生徒役を演じ、候補者はその姿勢を正すことになった。ケイティは候補者にそれを3、4階くり返させ、毎回異なるフィードバックを与えて、取り入れさせた。その候補者は前向きな態度を崩さず、フィードバックに熱心に耳を傾けた。彼女が練習の文化のなかでどのようにふるまうか、よく理解することができた。


候補者に何を練習させるのであれ、フィードバックのプロセスでどのように反応するかということにしっかり注意を払うこと。フィードバックに反発や抵抗を見えるか。余計な取り組みだと思っているか、それとも受け取ったフィードバックのレベルの高さを喜んでいるか。このプロセスは採用の判断に役立つだけでなく、採用候補者のためにもなる。このプロセスを楽しめないなら、練習と上達に集中した環境で働くのもおそらく楽しめないからだ。


練習を通して教師を成長させなければならないことがわかるにつれ、私たちは採用時に練習をどう利用できるか考えるようになった。かならずしも最高の教師を採用する必要はなく、もっとも練習を受け入れる余地がある教師を採用すればいいことに気づいた。急成長する可能性のあるレベル6(10段階中)の教師のほうが、学習曲線がゆるやかで、練習やフィードバックに抵抗を示すレベル8の教師のより好ましい。指導能力を重視するのはたしかだが、よりうまく指導できるように指導することは可能だし、それが私たちの求めていることでもある。


最低でも5年間は組織にとどまる人を採用したいとしよう。その場合、入った1年目でどうであるかより、練習と指導を受けた1年後にどうなっているかを考えるほうがはるかに重要だ。誰かを練習させて10段階中6のレベルだとしても、練習とフィードバックに積極的な姿勢を見せる人なら、練習の文化に価値ある貢献をしていることになる。その人がレベル8になる過程で、たゆみない向上心によって、ほかのレベル8の人たちをレベル9に押し上げるかもしれない。優秀だが向上の文化を台なしにする可能性のある人より、練習で能力が開花する人を採用したほうが実り多いかもしれないのだ。


練習を軸にした組織を作るということは、すなわち、練習に対する反応がいい人を採用することだ。フィードバックのやりとりが好きな人、チームワークを楽しめる人、自分のまちがいを抵抗なく話せる人、そして改善することに対して熱心な人を採用する。要するに、採用に練習を取り入れると、候補者に求める属性が変わり、採用プロセスそのものが変わる。