第2677冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • 練習のための人材を選ぶ2


候補者と、部下になるかもしれない従業員との非公式なやりとりの場も設けよう。候補者は礼儀正しく丁寧か。それとも見下した態度で無礼か。職位に関係なく同僚からのフィードバックを受け入れることができるか。広告会社に応募してきた人には、たとえば新しい製品群のミニキャンペーンを作ってもらう。アイデアは革新的か。フィードバックを返したときに、喜んで取り入れたか。不動産会社の志願者には、販売予定のビルの宣伝文句を考えてもらう。市場のセンスを持っているか。顧客の要望を把握しているか。宣伝文句が気に入らなかった顧客にどう対応するか。


雇うほうのテーマはおわかりだろう。こうした課題の結果は重要だが、それと同じくらい、練習とフィードバックの体験に候補者がどう反応するかを観察しなければならないのだ。候補者の面接のなかで、フィードバックにもとづいていくつかちがうやり方を試してもらい、練習を通して上達するか、それとも練習に抵抗するかを確認する。


アンコモン・スクールズにエリカが初めて面接にやってきたときには、徹底的に模擬授業の準備をしていた。ひとりで練習と準備に何時間も費やしたのだが、授業は大失敗に終わった。エリカが話しているときに何人かの生徒がしゃべり、ほかの生徒の邪魔をしていた生徒が席に連れ戻され、授業が終わって生徒を席からフリースペースに移動させるのも効率良くできなかった。しかし、エリカは職を得た。なぜか? 教室でのスキルだけでなく、率直なフィードバックを受け止める能力、自分の指導について考える能力、授業を改善するためのにとるべき行動を特定する能力があったからだ。授業後の話し合いで、エリカは授業の別のやり方をおよそ15通りあげた(「ルーティンや手順をもっと理解しておくために、あらかじめ教室を見学しておくべきでした」、「生徒がフリースペースにいるときには、見まわる回数を増やすべきでした」)。そして面接官から熱心に意見やフィードバックを得ようとした。面接を台なしにしてしまったと考えたエリカは、夫に電話をかけて、いい経験だったがぜったいに採用されないと伝えた。そのときには知る由もなかったが、フィードバックに対する反応や、またやってみようとする意欲が、彼女に職を与えたのだ。


見込みのある候補者にスクールリーダーがフィードバックを与えるとき、よくこんなふうに言う。「あなたが当校の教師なら、いまの授業について言いたいことは……」。そのフィードバックに対する反応を見れば、練習や前向きな批評を受け入れることにどのくらい意欲的かがすぐにわかる。メモをとっているか。うなずいているか。提案を押し返したり、自分の行動の言いわけをしたりするか。それらはみな非常に役立つデータだ。教育法や理論について聞いたときに返ってくる答えよりずっと役に立つ。だから、自分の授業での指導方法を練習してもらう。授業について反省する練習、強みと改善が必要な部分のフィードバックを受ける練習をしてもらい、最終的には、フィードバックを取り入れてもらうまた授業の一部をおこなってもらう。つまり、職を得たら実際にやることを、採用前にやってもらうのだ。


あなたの仕事に必要だが、練習で改善するのはむずかしいスキルを考えてもらいたい。そういうスキルの持ち主を雇うのだ。ある程度の練習で改善できないスキルがあれば(たとえば、基本的な対人術や、社交上の品位)、それをすでに持っている人を雇う。そうした必須のスキルを特定し、候補者にそのスキルがあるかどうかを面接(または電話インタビュー)で確かめる。そのあと「練習できる」スキルを特定して、候補者に練習を見せてもらい、その人が練習でそのスキルを伸ばせるかどうかを見きわめる。新たな従業員を雇うときの基準に練習に組みこめば、練習の文化に根ざした強力なチームを作るチャンスがさらに広がる。