第2603冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 腰に手を当て、ひじを張る


権力を誇示して相手に強い印象を与えるために使う縄張り行動のひとつに、腰に手を当て、ひじを張る姿勢がある。このノンバーバル行動では、腕がVの字に両側に張り出し、親指を後ろにした両手が腰にのる。立ち話をしている制服姿の警察官や軍人は、ほとんどいつもこの姿勢をとっている。これは権力を示す訓練の結果で、民間ではあまり好まれない。軍の関係者が退役して民間企業に入るなら、権威を振りかざす印象を与えないよう、イメージを柔らかくするほうが賢明だ。腰に手を当ててひじを張る姿勢をできるだけとらないようにするだけで、民間人が戸惑うような軍人風の物腰をなくせることが多い。


女性の場合は、こうして両手を腰に当ててひじを張る姿勢を有効に利用できることがある。私は女性の管理職に、この姿勢は強力なノンバーバルの主張をもっているので、役員室で男性に立つ向かうときに使えると教えてきた。誰にとっても、特に女性にとっては、一歩も譲らない自信を示し、相手に威張っても無駄だと印象づける効果的な方法になる。職場の若い女性に対して、男性は手を腰に当てながら話しかけて縄張りの支配を示し、ノンバーバルに威圧することが多い。この行動をそっくり真似れば――あるいは先に使えば――はっきり口に出して言えない女性でも対等な立場に立てる。この姿勢は、縄張りを主張しながら「問題がある」、「うまくいっていない」、または「一歩も譲る気はない」ことを伝える、便利な方法だ(モリス、一九八五年)。


両手の親指を背中側に回して腰に当てるという一般的なこの姿勢には、同じように腰に手を当てるが、親指を前に出すというバリエーションもある。こちらは何かを聞き出したいと思いながらも、気遣っている場合に多い。まず、好奇心を滲ませながら手を腰に当てる(両手の親指を前に出して腰に当て、ひじを突き出す)このしぐさで問題に取り組んでおき、状況がどうなるかを判断した上で、必要があれば親指を背中側にクルリを回して、権力を振りかざす場合もある。