第2105冊目 FBI式 人の心を操る技術 ジャニーン・ドライヴァー (著), 高橋結花 (翻訳)


FBI式 人の心を操る技術 (メディアファクトリー新書)

FBI式 人の心を操る技術 (メディアファクトリー新書)

  • 自分の体に触れるのは弱気の証拠


爪を噛んだりいじったりするという仕草は、なんといっても弱々しい。大企業の管理職が会議中に爪を噛んでいる姿は想像できない。交渉の最中、爪をかじっている不動産王ドラルド・トランプ――そんな姿はあり得ないだろう。一方で、相手に向かって中指を立ててせるようなあからさまなジェスチャーもある。この両極端なジェスチャーのあいだにも様々な意味をもったジェスチャーが無数に存在する。どれもが、その人物の心を正確に推し量る指標になる。


自分を触る仕草は、緊張、自信の欠如、あるいは退屈を示すシグナルである。ボディランゲージの専門家が「ごまかし」「鎮静剤」と呼ぶこれらのジェスチャーは、自分自身をなだめたり、落ち着かせるためにとる行動だ。「大丈夫。乗り切れる」とみずからに言い聞かせているようなもので、次のような行為が代表例だ。

  • 両手をあちこちに擦り合わせる
  • 体のあちこちを触る
  • 爪をいじる
  • 脚をさする
  • ポケットに手を入れる


――自分を触るジェスチャーは、気おくれする不慣れな環境やストレスの高い状況でよく見られる。たとえば上の写真を見てほしい。


彼らが大切な仲間の葬儀に集った友人たちなら、それぞれが自分の体に触っている理由もすべて説明がつく。互いの悲しみを慰め会うために集まったが、あまりのつらさに自分自身を癒そうとして体を触るというわけだ。


一方、この写真に人々が交流会に集った若いビジネスピープルなら、問題は多い。彼らの仕草は不安感や自信の欠如をおおっぴらにさらしているからだ。


自分に触るジェスチャーの代表例として「親指をこぶしの中で握る」という仕草がある。もちろん、その原因も不安感だ。心配性には見えない人でも、ストレスが高じるこの種のジェスチャーをやってしまう。


マドンナの実弟は著書のなかで、並外れた自信家である姉の仕草から、彼だけは心情を読み解けたと書いている――「無口で父に似て、姉もぼくも世間話が好きではない。というより、ぼくらはお互い、相手のまなざしや仕草がすっかり頭に入っていて、寸分たがわず相手の思いを解読することができる。だから、姉がガミガミ怒るオバサンのように腰に両手を当てると、「トラブル発生」とぼくにはわかる。姉がガミガミとマニキュアをはがし始めると、そわそわしているサインだ、そして、親指を中にしまい込んでギュッと手を握っていると励まして欲しいんだ、とわかる」


自分の体のうち、われわれがつい触ってしまいがちな部位に、特に無防備な3ヵ所がある。喉のくぼみ(喉仏の下)、ヘソ、そして局部だ。人は、得に女性は、緊張したり危険を感じると、首や喉を手で覆うことがある。自分を触る仕草は、深層心理で脳を被害から守ろうとする行為なのだ。首には脊椎や頸動脈が通り、頭や脳に血液を運んでいる。人間は脅威を感じると、それがたとえ言葉による非難であっても、反射的に喉を守る。あなたとの会話中、この仕草を相手が見せたら「あなたの言っていることが気に入らない」「信用してない」、あるいは「間違っているのは私。あなたは正しい。だから気まずい」と言っているようなものだ。


普段の状態を観察した結果では、自分を触る癖はないとわかっている人が、あなたとの会話中にそうした行為を始めたら「注目ポイント」だ。言葉や行為によって、不快になった証拠である。友好的に話を続けたいのであれば、さりげなくその原因を突き止めなければいけない。


自身でも、自分を触る仕草をしないように心がけよう。それだけでも集中力が高まり、鋭敏になる。自信を感じさせる仕草や姿勢(ピンと伸びた背筋、収まりのいい腕の位置、安定感のある足幅)が自然に身につくはずだ。手で体のどこかを触りそうになったら、いったん手を後ろへ回して隠してから、パワーを醸し出すジェスチャーを見えよう。メモをとり始めても、脇へ自然に置いていい。