第2602冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 腕が語る手がかりから、気分や感情を見極める


人の腕の動きをしばらく観察して、その人の基本的な動作を覚えておけば、どんなふうに感じているかを腕の動作から見分けられるようになる。たとえば、腕の動きを見れば、家族が仕事を終えて帰宅したときの気分がわかる。大変な一日を過ごした後や、気分落ちしたり、悲しい気持ちになったりしているときは、肩が落ち、腕は体の横にダラリと垂れる。これを知っておくだけで、一日の疲れを癒せるよう元気づけることができる。その反対に、長いこと会わなかった相手に再会した人はどうだろう。両手をまっすぐ前に伸ばしているはずだ。その腕は明らかに「こっちに来て、抱きしめたいから!」と語りかけている。この美しい光景は、両親が子どもをやさしく迎え入れ、子どももまた同じ気持ちで応えるときの温もりを思い起こさせる。重力に逆らい、無防備に体をすっかり見せるように腕を伸ばすのは、心からの好意を表しているからだ。


では、本心から喜んでいないとき、腕の動きはどうなるだろうか? 私の娘がまだ小さかったころ、いっしょに親族の集まりに出席したとき、挨拶しに近付いてきた親戚を迎える私が腕をまっすぐ前に伸ばさず、腕を両脇につけたまま、ひじから先だけを前に出したことがある。すると娘も、抱きしめようと手を差し伸べた人物に、私と同じ腕の動きで応えていた。私は無意識のうちに、その人を心から歓迎していず、会うのがそれほど嬉しくないという気持ちを表していたらしい。娘も同じ気持ちで対応し、後からその人をあまり好きではないと話していた。娘がはじめからそう思っていたにせよ、私の気持ちが伝わったにせよ、私たち二人とも腕を半分しか伸ばさない動作によって、知らず知らずのうちに本当の気持ちを表現していたのだった。


腕の動きには、次に挙げるような毎日のメッセージを伝える役目もある――「こんにちは」、「さようなら」、「こっちに来て」、「知りません」、
「むこうです」、「この上です」、「この下です」、「止まれ」、「下がれ」、「出ていけ!」、「信じられない!」。これらのジェスチャーはたいてい世界のどこでも理解してもらえ、言葉の壁を乗り越えるのに使われることも多い。また腕を使うわいせつなジェスチャーも数多く、ある文化だけで通用するものも、世界共通ものもある。