第2599冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 重力に逆らう足


動かずに立っているときにも、話をしている人が少し背を高く見せる姿勢になり、言いたい点を強調するために自分を大きく見せることがある。そしてそれを何度も繰り返す。これは無意識の動作で、話にまつわる本当の気持ちをそのまま表すことが多いので、とても正直な手がかりだ。その動作は話の筋に沿って現れ、感情と言葉を結びつけている。好きな歌の拍手とテンポに合わせて足を動かすように、私たちは何か嬉しいことを話すときにも、その内容に合わせて足と脚を動かす。


興味深いことに、重力に逆らう足と脚の行動は、臨床的鬱病の人にはめったに見られないという。体はその人の感情をそっくり反映する。だから、ウキウキしている人ほど、重力に逆らう行動をたくさん見せることになる。


重量に逆らう行動をねつ造することはできるだろか? 名優か年季のいったウソつきならできるとは思うが、ごく普通の人は、辺縁系の命じる行動をどう調整したらいいかわからないはずだ。辺縁系の反応や重力に逆らう行動を自分の意思で真似しようとすると、わざとらしくなる。状況に対して控えめすぎる、またはぎこちなく見えるか、あまり生き生きしていない。腕を思いきり高く振り上げる挨拶を真似ても、うまくいかないのと同じだ。腕がすぐに下がって、ひじが曲がるので、演技だとわかってしまう。その身振りからは、わざとらしさが丸見えだ。自然に重量に逆らう行動は、たいていは嬉しい精神状態をとてもよく表し、心からのものに見える。


洞察力のある観察者に情報をもたらしてくれる行動のひとつに、重力に逆らう、「スタートの姿勢」と呼ばれるものがある。これは、立っている人が(地面に両足を平らにつけた)静止の姿勢から、片足のかかとをあげ、親指の付け根に体重をかける姿勢になることを言う。これからしようとしている意図を示す手がかりで、その人が足の動きを必要とする何らかの動作を始める準備ができていることを表している。もっと強いつながりを求めているか、心から関心を示しているか、立ち去りたいかだ。意図を伝えるすべてのノンバーバルの手がかりと同様、相手が何かをしようとしていることがわかったら、あとは前後関係とその人について知っていることを総動員し、その何かが何であるかを予想しなければならない。