第1268冊目 ドラッカー流 最強の勉強法(祥伝社新書207) [新書] 中野 明 (著)
- 作者: 中野 明
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2010/06/30
- メディア: 新書
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目標は必ず書きとめる
目標が明らかになったら、次に必ず実行しなければならないことがある。非常にささいなことながら、これを怠ってしまうと、勉強に大きな支障をきたすことになる。それは、明確にした目標を何かに書きとめるという、極めて簡単なことだ。
人間の記憶はなんていい加減なもので、決めたことなどすぐに忘れてしまう。特に都合の悪いことはそうだ。また、都合の悪いことを都合のいいものに書き換えて、知らぬふりをしてしまうのも人間の性である。たとえば、所期の青果物をもっとハードルの低い別のものに置き換え、初めからこれが目標だったふりをするなどがそれに相当する。
よって、何かをやり遂げようと心に決めたら、それを書きとめておなかければならない。いわば証拠を残しておくのである。そうすれば忘れることもない。書き換えるのも困難だ。この目標を書き記すという点に関して、ドラッカーは面白いエピソードを紹介している。
1945年頃のことである。ドラッカーは3ヵ年の勉強テーマとして、「15世紀から16正規にかけてのヨーロッパ史」を選んだという。そしてこの勉強の中で、当時ヨーロッパで力を有していた2つの組織、カトリック系のイエズス会とプロテスタント系のカルヴァン派が、同じ方法で成長することを、ドラッカーは発見したという。
イエズス会の創始者はイグナチウス・デ・ロヨラ、カルヴァン派はジャン・カルヴァンで、前者は1534年に南ヨーロッパで、後者は1541年に北ヨーロッパで、場所は異なるもののほぼ同じ時期に創設されている。
両会派が成長の起爆剤に用いたのは、14世紀に、ある無名のドイツ神学者が始めたもので、司祭や牧師が何か重要なことをやると決めたら、やるべきことと期待する成果を書き記させるとうものであった。そして、9ヵ月あるいは1年後に、期待と実績を比較させたのである。
そもそも、何かをすると決めたら、それを書きとめて、一定期間後、期待と現実を比較して次の行動にフィードバックするという行動は、エルザ先生や編集長ドンブロウスキーが実行していた方法であり、のちにドラッカーが体系化する目標と自己管理のマネジメントに他ならない。
これがすでに400年も500年も前から行われていたというのだ。しかも、ドラッカーはこれを3ヵ年の継続学習から発見したのである。何ともドラッカーらしい話だ。
ということで、われわれも中世ヨーロッパですでに発見されていたという手法を実行しよう。ドラッカーは、目標の具体的な記し方までは詳述していないが、ここでは便宜上次のような例を掲げておきたい。
テーマ…行動経済学
開始日…2010年8月1日
終了予定日…2010年10月31日
目標…行動経済学の概要をひととおり理解する
期待成果…20〜30ページ程度のプレゼン資料に概要をとりまとめる
学習方法…関連書籍による
特別報酬…iPad(満足のいく成果をアウトプットできた場合のみ)
ここまでしっかり記述すれば、もはや言い訳はできないだろう。また、インセンティブがあれば、それも記しておく。記さないようりも動機づけのパワーは強まる。