第2031冊目 ドラッカー流 最強の勉強法 (祥伝社新書) 中野明 (著)


ドラッカー流 最強の勉強法(祥伝社新書207)

ドラッカー流 最強の勉強法(祥伝社新書207)

  • 目標は必ず書きとめる


目標が明らかになったら、次に必ず実行しなければならないことがある。非常にささいなことながら、これを怠ってしまうと、勉強に大きな支障をきたすことになる。それは、明確にした目標を何かに書きとめるという、極めて簡単なことだ。


人間の記憶なんていい加減なもので、決めたことなどすぐに忘れてしまう。特に都合の悪いことはそうだ。また、都合の悪いことを都合のいいものに書き換えて、知らぬふりをしてしまうのも人間の差がである。たとえば、所期の成果物をもっとハードルの低い別のものに置き換え、初めから目標だったふりをするなどがそれに相当する。


よって、何かをやり遂げようと心に決めたら、それを書きとめておかなければならない。いわば証拠を残しておくのである。そうすれば忘れることもない。書き換えるのを困難だ。この目標を書き記すという点に関して、ドラッカーは面白いエピソードを紹介している。


1945年頃のことある。ドラッカーは3ヵ年の勉強テーマとして、「15世紀から16世紀にかけてのヨーロッパ史」を選んだという。そしてこの勉強の中で、当時ヨーロッパで力を有していた2つの組織、カトリック系のイエズス会プロテスタント系のカルヴァン派が、同じ方法で成長することを、ドラッカーは発見したという。


イエズス会創始者はイグナチウス・デ・ロヨラ・、カルヴァン派ジャン・カルヴァンで、前者は1534年に南ヨーロッパで、後者は1541年に北ヨーロッパで、場所は異なるもののほぼ同じ時期に創設されている。


両会派が成長の起爆剤に用いたのは、14世紀に、ある無名のドイツ神学者が始めたもので、司祭や牧師が何か重要なことをやると決めたら、やるべきことと期待する成果を書き記させるというものであった。そして、9ヵ月あるいは1年後に、期待と実績を比較させたのである。


そもそも、何かをすると決めたら、それを書きとめて、一定期間後、期待と現実を比較して次の行動にフィードバックするという活動は、エルザ先生や編集長ドンブロウスキーが実行していた方法であり、のちにドラッカーが体系化する目標と自己管理のマネジメントに他ならない。


これがすでに400年も500年も前から行われていたというのだ。しかも、ドラッカーはこれを3ヵ年の継続学習から発見したのである。何ともドラッカーらしい話だ。