第3361冊 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)



第三に、そのような人たちに共通することとして、日常生活の中に継続学習を組み込んでいることである。もちろん彼らは、私がこれまで六〇年間行ってきたこと、つまりテーマごとに集中して勉強するという方法をとっているとはかぎらない。しかし彼らは、常に新しいことに取り組んでいる。昨日行ったことを今日も行うことに満足しない。何を行うにせよ、自らに対し、常により優れたことを行うことを課している。さらに多くの場合、新しい方法で行うことを課している。


第四に、自らを生き生きとさせ、成長を続けている人は、自らの仕事ぶりの評価を、仕事そのものの中に組み込んでいる。


第五に、きわめて多くの成功してきた人たちが、一六世紀のイエズス会カルヴァン派が開発した手法、つまり行動や意思決定がもたらすべきものについての期待を、あらかじめ記録し、後日、実際の結果と比較している。そのようにして、彼らは自らの強みを知っている。改善や変更や学習しなければならないことを知っている。得意でないこと、したがって、他の人に任せるべきことまで知っている。


第六に、成果をあげている人たちに、その成功の原因となっている経験について聞くと、必ずといってよいほど、すでに亡くなった先生や上司から、仕事や地位や任務が変わったときには、新しい仕事が要求するものについて徹底的に考えるべきことを教えられ、実行させられてきたという。事実、新しい仕事というものは必ず、前の仕事とは違う何かを要求するものである。


しかし、これらのことすべての前提となるべきもっとも重要なこととして、成果をあげ続け、成長と変革を続けるには、自らの啓発と配属に自らが責任をもつということである。


これらはおそらく、かなり耳新しい助言と聞こえよう。しかしこれは、とりわけ日本のような国においては実行がむずかしい。企業にせよ、政府機関にせよ、日本の組織は、一人ひとりの人間を配属する責任や、彼らが必要とする経験や挑戦の機会を与える責任は、組織の側にあるという前提で運営させられているからである。