第3359冊目 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)



私は、一九三七年にイギリスからアメリカへやってきた。そして、あのロンドンでの経験から何年か経った一九四五年ころ、新しい勉強のテーマとして、近世初期、つまり一五世紀から一六世紀にかけてのヨーロッパを取り上げた。


私は、ちょうど当時ヨーロッパで力をつけるようになった二つの社会的機関、すなわち南ヨーロッパを中心とするカトリック社会におけるイエズス会と、北ヨーロッパを中心とするプロテスタント社会におけるカルヴァン派の二つの社会的機関が、奇しくもまったく同じ方法によって成長していたことを知った。この二つの組織は別々に、ただし一五三四年と一五四一年という同時期に創設されていた。しかも創設時から、まったく同じ学習方法を採用していた。


イエズス会の修道士やカルヴァン派の牧師は、何か重要な決定をする際に、その期待する結果を書きとめておかなければならないことになっていた。一定期間の後、たとえば九ヶ月後、実際の結果とその期待を見比べなければならなかった。そのおかげで、「自分は何がよく行えるか、何が強みか」を知ることができた。また「何を学ばなければならないか、どのような癖を直さなければならないか」、そして「どのような能力が欠けているか、何がよくできないか」を知ることができた。


私自身、この方法を五〇年以上続けている。この方法は、「強みは何か」という、人が自らについて知ることのできるもっとも重要なことを明らかにしてくれる。「何について改善する必要があるか」「いかなる改善が必要か」も明らかにしてくれる。さらには、「自分ができないこと、したがって行おうとしてはならないこと」も教えてくれる。


そしてまさに、「自らの強みが何か」を知ること、「それらの強みをいかにしてさらに強化するか」を知ること、そして「自分には何ができないか」を知ることこそ、継続学習の要である。