第1216冊目  小泉進次郎の話す力 [単行本(ソフトカバー)] 佐藤綾子 (著)


小泉進次郎の話す力

小泉進次郎の話す力


何を言うかより、にこやかな顔で言う


二〇一〇年七月五日/愛媛県新居浜市
「ようけ集まってもろうて、本当にうれしいけん」


先にあげた新居浜市の応援演説は、猛烈に暑い日でした。聞いている人たちは額に流れる汗をハンカチでぬぐっています。進次郎氏が応援する当のこの場の主人公・山本順三参議議員も、暑さのあまり上着を脱ぎ、白シャツの第一ボタンを外して腕まくりをして、暑くてたまらないという格好をしているのです。


ところが、応援に駆けつけたという小泉進次郎氏は、ネクタイこそしていませんが、この猛烈な暑さにもかかわらず、ダークグレーのジャケットをきちんと着て、しかも、前のボタンも一つかけています。きっちとしたスタイルを崩さず、どんどん人々に問いかけていくのです。


その時の顔は、暑さに顔をしかめている当の立候補者とちがって、あくまでもにこやかです。「ようけ集まってもろうて、本当にうれしいけん」と言いながら、もう満面の笑みなのです。


こんな顔で宣伝カーに乗り込んでくるのですから、町の人々は当然彼に好意を持ちます。そこで、「もう演説する前から、実は今日声をかけられたんですよ。『絶対入れるからね』と言われたんです。応援演説しなくても入れてもらえるなら演説しなくてもいいということになりますが、そこは一つ山本先生をよろしくお願います。書く時には『小泉』と書かないで『山本』と書いてくださいね」と言って、また笑わせます。


あらゆる場面で笑いを誘うこと、これが聞き手に非常に幸福な気持ちを与えるのです。笑いの効用について私は自分の専門のパフォーマンス学から、「聞き手の警戒心を解く」「話し手の親密感を伝える」「相手のやる気を起こす」の三点を、千人を対象にした、アンケート調査の結果から特徴としてつかみだしています。


小泉進次郎氏が暑くてもジャケットを着て、さらにニコニコと車の上から呼びかけていることで、聞き手もまた、暑いにもかかわらずニコニコと楽しい気持ちになり、このポジティブな表情が相手まで楽しくしてしまうのです。これがパフォーマンス学で言う「ミラー効果」です。


福田元首相の静か過ぎる暗い顔では、そのミラー効果によって、相手まで静かになってしまいます。


さわやかでハンサムな美貌を持ち合わせ、ニコニコとしてまず第一声を発する。彼の行くところ行くところ、すべての応援演説には拍手が絶えず、行ったところは全部連戦連勝となっていったのも、このような理由からです。


あなたも、「何を言うか」の前に、まず「にこやかな顔で」を、是非心がけてください。実際それで相手の心のなかの好感と反感が分かれてしまうのです。