第1074冊目  小泉進次郎の話す力 [単行本(ソフトカバー)]佐藤綾子 (著)

小泉進次郎の話す力

小泉進次郎の話す力


左右均等の視線で聴衆を飽きさせない


小泉純一郎氏、オバマ大統領ともに聴衆のすべてを見回す視線のデリバリーの達人であることをすでに書きましたが、進次郎氏もこの若さで視線のデリバリーを身につけています。


七月五日の新居浜でも、どんなに暑くても周りをぐるりと見回しながら、子ども手当てをもらっている人はだれ、このなかで車を運転する人はだれですか、というように視線をぐるぐると回していました。これが聞き手を視線によって巻き込むのです。オバマ大統領が天才的に身につけているこの力を、進次郎氏は父親を見ることによって体得したのでしょうか。


青森県で、二〇一〇年三月七日、「こっだら寒いなか、よくおいでやんしや」と方言で挨拶した時も同じことが起きています。おそらく寒くて、聞いている人たちはカタカタと震えながら、それでも車の上の進次郎氏に目線を一生懸命集中させていたことでしょう。


どの方向からでも自分の顔や姿が見えるように、彼はぐるぐると顔の方向を全体に公平に分配(デリバリー)し、そこで一瞬ずつ聴衆とアイコンタクトを合わせて、聴衆を巻き込んでいくのです。オバマ氏と共通の、演説のうまい政治家の最大の条件です。


オバマ氏の視線のデリバリーは、私の実験データでも完璧なもので、二〇〇九年の台帳量就任演説では十九分二十秒のなかで、センターから右へ六十四回、左へ六十二回、視線を送っていました。左右が均等なのです。


ところで、アイコンタクトは見つめている時間の長さ、強さ、方向性の三つで構成されるのですが、進次郎氏はあらゆる人々に同じ時間、同じ強さでアイコンタクトをきっちりと当てていくという視線の使い方の達人でもあります。