第1147冊目  小泉進次郎の話す力 [単行本(ソフトカバー)]佐藤綾子 (著)


小泉進次郎の話す力

小泉進次郎の話す力


自分がどこからどう見えるか、よく知っておく


先に新居浜で、進次郎氏が暑くてもジャケットを着ていたことを指摘しました。ガードマンと進次郎氏ぐらいがジャケットを着ていて、周りのほとんどの人が長袖ワイシャツ姿、あるいは袖をまくり上げた格好でいるのに対して、なんとフォーマルに聞き手に敬意を払っているのかと、聞いた人々を無言のうちにその服装だけで配慮を感じたことでしょう。


しかも、聞き手が見つめている目の前の進次郎氏は、どこからどう見てもゴルフの石川遼か、あるいはテレビ画面のなかから抜け出てきた俳優かというぐらいの容姿端麗です。当然、若いので中年太りもせず、お腹の余分な出っ張りもなく、後ろから見ている人に対してもズボンのお尻のあたりのたるみもないのです。


しかし、そんなほぼ政治家としてはありえないほど完璧な姿を保っていながら、さらに彼は自分をどう見せるかという、文字通りの画像としての自分の見せ方を計算し尽くしていると思われます。


最もわかりやすいのが自民党のネット広告です。正面から谷垣禎一総裁やそれまでの党首たちを写してきた写し方とはまるきりちがうのです。


まず正面の顔を写し、次に斜め横から写し、さらに正面に戻り、また斜め横からプロフィール、横顔を写しています。おまけに目もとの大写しもあります。涼やかな整った形の目で視聴者を見つめて、右手の人差し指を立てて、一番の国をつくりましょうとお馴染みの自民党の決めポーズをやってのけるのです。


その時に、手首につけた緑のブレスレットが若々しさを演出します。年配者がこんなものをくっつけてネット広告に出たら、「あれは何だ。加齢による高血圧で血流が悪いから、何か健康のためのブレスレットをつけているのだろう」とマイナスのイメージにしかならないにちがいないのです。


若さが与えるインパクト、緑のブレスレット、目もとの大写し、正面と斜め横、右からだけではなく左斜め横、左やや後方に傾いた後ろ姿に近い横顔というふうに、まるで男性誌のモデルのように進次郎氏のバストアップ写真、殊に顔にフォーカスした写真で、自民党ネット広告は大いに彼を見せているのです。


見せる商品として使えるのは、もちろん年取った人からの温かみや迫力のある顔もあるでしょう。


けれど、古臭い自民党でもうダメだという人々が政権交代をやってのけてしまったのですから、ここは一つ若返りした自民党というアピールしなくてはならないわけです。そのためにはこの若者、小泉進次郎氏の大写しほど、そのイメージがシンボリックに伝わっていく画像も、今のところ他にありません。


民主党側のルックス上の対抗馬である蓮ほう氏が、仕分け中であっても机の下から見えてテレビにははっきり映るタイトスカートの両足をきっちりそろえて、ナナメ横に流してみるあたりでしょうか。