第1151冊目  学び続ける力 (講談社現代新書) [新書]池上 彰 (著)


学び続ける力 (講談社現代新書)

学び続ける力 (講談社現代新書)


聴き上手なイノッチと中居くん


前章では、「いい議論には、相手の話をきちんと受け止めることが必要だ」という話をしました。この、受け止める力=聴く力について、もう少し考えてみましょう。


テレビで共演した聴き上手といえば、イノッチこと井ノ原快彦さんが思い浮かびます。イノッチは、面白がって聴いてくれることで、相手をのせて、さらにそこから話を発展させてくれます。「うわーッ、面白いですね」とうなずきながら聴いてくれると、こちらもついついしゃべってしまいます。


これは、天性の聴く力というのでしょうか。それに加えて、相手をいい気持ちにさせてくれる性格のよさがあります。気のきいたことを言おうとするのではなく、「ほう」「はあ」「へえーッ、すごいですね」などと、シンプルな合いの手がうまくて、そのときの顔の表情もまたいいのです。


とにかく全身で受け止めて話を一生懸命聴いてくれる、そんな印象を与えるタイプです。


SMAP中居正広さんも聴き上手です。


中居くん(つい、君づけしてしまいます)は私が何か言うと、それについて自分の知識を総動員して、「つまりこういうことですか?」と問いかけてきたり、私の話の展開に合わせようとしてくれたりします。そこがとても好感を与えます。知識を総動員して話しを展開させようとする、その性格のよさは素敵だと思いますし、こちらもついつい丁寧にしゃべってしまいます。


気のきいたことを差しはさんだりとか、話をまとめたりとか、話を展開させようとして必死になるよりは、相手の話を面白がって聴くというのが、まずは一番大事です。


中居くんのように、相手の話に「つまり、これはこういうことですよね」と返すのは、一歩間違えるとイヤミになりかねません。そう思わせないのは、彼のセンスと人柄だと思います。


中居くんはふだんから、非常に勉強家です。けれども、「自分は途中から勉強するようになったので、基礎があるわけじゃない、どこか自分には足りないところがあるんじゃないか、どこか間違っているかもしれない」という恐れのようなものを持っているように感じられます。


自分はまだ十分知らないということを知っている謙虚さは、その人の印象を大きく左右します。「おれは何でも知ってるんだ!」と胸を張っている人もときどきいますが、そういう態度から受ける印象はよくないものです。


このような「聴く力」があるからこそ、イノッチも中居くんも、司会や進行がうまいのです。