第1983冊目 奇跡の営業 [単行本(ソフトカバー)] 山本正明 (著)


奇跡の営業

奇跡の営業


うまく話せない人ほど「うまく聴く」達人になる


ここまで見てきたように、営業の世界で成功するのは必ずしも話し上手な人だけではありません。いかに口達者な営業マンでも「正直な思い」を伝えなければお客様の心は動かせないし、お手本どおりのよどみない口調が、かえってお客様を警戒させてしまうこともあります。あるいはトークに自信があるのが災いして、自己研鑽を怠ったり、独りよがりでわかりにくい説明になってしまうこともあるでしょう。


とくに「紹介」に関していえば、話し上手な営業マンほど失敗してしまう例が目立ちます。自分がしゃべることが主となってしまい、お客様の話を「うまく聴く」ことができないからです。


第1章でも述べたとおり、お客様から紹介をいただくためには、お客様に満足してもらう必要があります。そのためにアンケートで「商談のどこがよかったか」をたずね、お客様に満足感を自覚してもらうわけですが、その大前提として、営業マンは「よかったな」と思ってもらえるような商談をしなければなりません。


そこで大切なるのが「うまく聴く」ということです。


うまく聴くというのは、自分が聴きたい情報を引き出すことではありません。そんなことを聴いたところでお客様の満足度は少しも高まりません。


相手がしゃべりたいことを存分にしゃべっていただき、「話したいことはすべて話した」という達成感をもってもらう。それが「うまく聴く」ということです。


そして私の経験上、うまく話せない営業マンほどうまく聴くことができる。必要な情報を聴き出すためにいろんな寄り道をするからです。


たとえば保険の提案をするためには、お客様の家族構成や経済状況など、プライベートな情報に踏みこんでヒアリングをおこなう必要があります。話し上手な営業マンなら、そうした聴きにくい情報もさらりと引き出せるのでしょうが、残念ながら私にはそれができません。


だから私はまず自分の話からはじめます。子どもが四人もいること、その四人目の次男を生んだ後に妻が乳ガンにかかったこと、前職の年収では生活できないと思ったから転職してことなどをオープンに話すと、お客様も心を開いて自分のことを話してくれるようになります。


そのあとはお客様が満足するまでとことん話につきあいます。私はひとりのお客様との商談回数は三回がちょうどいいと考えていますが、お客様が話し足りない様子であれば、四回でも五回でも通います。


そうすればお客様は必ずしも満足してくれるし、おしゃべりのなかで親戚や友人の名前が出れば、最後に「あのとき話していた方を紹介してくれませんか」と具体的にお願いすることもできます。


無駄が多いように思えるかもしれませんが、これが紹介をもらうにはいちばん確実な方法であり、紹介先での契約率の高さを考えれば、下手な鉄砲を撃ちまくるよりもずっと効率がいいのです。