第1152冊目  小泉進次郎の話す力 [単行本(ソフトカバー)] 佐藤綾子 (著)


小泉進次郎の話す力

小泉進次郎の話す力


自分で自分の演説を聞く冷静さ


二〇一〇年七月二十六日/神奈川県 公開討論会
「政治家の世襲は、歌舞伎や落語の世界のそれとはちがうのです。有権者が当選させて、初めて成立するものです」


二〇一〇年十月五日/機関紙『自由民主』 二〇一〇年十月五日号 田崎史郎氏との対談
「一番の思いは、委員会での質問や本会議の討論などを通じて、自分自身の実力のなさを痛感していて、ポスターや講演などに使われる立場じゃないと思っていることなんです」


二〇一〇年六月七日/佐賀県 福岡たかまろ応援演説
自民党民主党のちがいは、ハッキリしています。民主党の国づくり、簡単に言えばこういうことです。『あれもやります、これもやります。皆さん、やりたいことを言ってください。お金はあとで、考えます』。自民党の国づくり、『あれもやりたい、これもやりたい。でも、それをやるためには、皆さんの努力も必要です。どうか、一緒にがんばっていきましょう。努力が報われる社会を築きましょう』ということでしょう。魅力ある国づくりがどっちなのかを、皆さんの目で、皆さんの耳で、判断してほしい。それが今回の参議院選挙。チェックがかかった参議院選挙です」


政治家の演説には、自分の話に熱中しつつも「観客は、今自分をどう見ているのか?」をどこかで観察しながら、自分自身を冷静に分析してみせる「観察者の目」が必要です。


父親の小泉純一郎氏が、「変人と呼ばれている私ですが」と平気で言ったようなもので、批判を逆手に取り、まるで人ごとのようにそれを客観的に分析してみせるやり方でした。この相当に大人びた熟達の手法を、進次郎氏はすでに身につけています。二〇一〇年七月二十六日、神奈川県の公開討論会で、「世襲議員」という批判に対してこう言っているのです。


「政治家の世襲は、歌舞伎や落語の世界のそれとはちがうのです。有権者が当選させて、初めて成立するものです」


まさにこれがポイント。「世襲世襲、と言っているあなた方だって、世襲議員を落とすこともできれば、当選させることもできるではありませんか。そのような、きちんとした選挙眼をもった有権者に選んでもらって当選しているのが私ですよ(だから、あなた方こそ選んだ責任があるんですよ)」と言いたかったにちがいありません。


私に言わせれば、すべての世襲議員が進次郎氏ほど優秀ならば、世襲おおいに結構です。彼の演説は、父親譲りのDNAによる遺伝、あるいは世襲にちがいないのですから。世襲と言われる身を冷静に受け止めて、逆にそれをどんどん売りだしているのが彼でしょう。



「一番の思いは、委員会での質問や本会議の討論などを通じて、自分自身の実力のなさを痛感していて、ポスターや講演などに使われる立場じゃないと思っていることなんです」二〇一〇年十月五日/機関紙『自由民主』 二〇一〇年十月五日号 田崎史郎氏との対談


いつも心のどこかに「自分がどう見られているか」という観察者の目を置くのです。