第877冊目 采配 [単行本(ソフトカバー)]

落合博満 (著)

采配

采配

明日のために切り替えるよりも、今日という日に全力を尽くせ


幸い監督としての私は経験しなかったが、チームがペナントレースで不振に喘ぎ、最下位に低迷したとしよう。夏場を過ぎれば、優勝の可能性がなくなった、クライマックス・シリーズ進出も絶望だと、メディアに書き立てられる。そうした苦しい状況で、つい監督は「来季に向けて気持ちを切り替えてやっていく」と公言し、ファームの若手を昇格させて起用したりする。

これは明らかに間違いだ。

監督の仕事は、ペナントレーズの最初から最後までベストを尽くして戦うことである。

若手の起用はチーム情報だと解釈しても、「来季に向けて気持ちを切り替える」ことなど有り得ない。最下位が決定的とはいえ、まだ今期のペナントレースが続いているうちは、その戦いに全力を注がなければならないだろう。最下位になれば、監督自身のクビが飛ぶかもしれないのだ。自分がいないかもしれないチームの将来を思う余裕があるのなら、なぜ今、この瞬間にその思いをぶつけないのか。

もちろん、胸の内で来季の戦力整備や戦い方を考えていくことは必要だ。しかし、そうしながらも今日の戦いに全力で向かっている。そういう姿を選手やファンには示さなければならないはずだ。