第726冊目 誰も教えてくれない男の礼儀作法 小笠原敬承斎/著

誰も教えてくれない 男の礼儀作法 (光文社新書)

誰も教えてくれない 男の礼儀作法 (光文社新書)

目次


序章 なぜ「武士の礼法」が成立したのか
第1章 男のこころ
第2章 男の姿勢
第3章 男の席
第4章 男の食作法
第5章 男のことば遺い
第6章 男のつき合い
第7章 男の格好


「毎日の挨拶のことば」を丁寧にしてみる


毎日使う挨拶は、どうしてもお座なりになりである。たとえば、自宅を出るとき、どれだけの人が丁寧にこころを込めて、「行ってきます」「行ってらっしゃい」などと家族に向かって挨拶をしているだろうか。


あるいは、朝の満員電車に揺られた後に会社へ到着し、他の社員やスタッフの人々と交わす挨拶を、小さな声で力なく「おはようございます」といってしまうことがあるかもしれない。


目覚めてから家族と対面するさいの「おはようございます」にも共通するが、相手の挨拶がすがすがしい印象だと、こちらの気分もよいものだ。ならば、相手の丁寧な挨拶を待つのではなく、自ら活気ある挨拶をするべきではないだろうか。


さて、私は幼い頃に、毎日行う挨拶こそ丁寧に行うことが、相手を敬う立ち振る舞いにつながり、それは家族に対しても忘れてはならない、と厳しく躾けられた。「親しき仲にも礼儀あり」は、毎日の挨拶には欠かせないということなのだろう。


先代が存命中は、先代が道場へ到着する否や、玄関へ迎えることはもちろんのこと、先代が部屋に入った後、しばらくして落ち着いた頃を見計らって改めて部屋の前に座る。さらに「失礼いたします」と声をかけてから襖を開け、扇子を前に置き、「ごきげんよう」と挨拶を行うことから一日が始まってのだが、それはただ単に上辺だけの決まりごとではなかった。


こちらは明るく笑顔で挨拶をしているつもりでも、「何か心配ごとがあるのでは」と先代から尋ねられたことは何度もあった。おそらく私の声の表情から、心身の状態を察してくれていたのであろう。その応対から、毎日行う挨拶だからこそ、いい加減に行うのではなく、大切にするべきであると、身を以って学ぶことができたように思う。


あなたに、すべての良きことが、なだれのごとく起きますように♪


今日の声に出したい言葉


「楽しみに金のかからない人が最も裕福である」――ヘンリー・デイヴィッド・ソロー

 

編集後記




誰も教えてくれない 男の礼儀作法 (光文社新書)

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