第522冊目 座右のニーチェ 突破力が身につく本 斎藤孝/著

座右のニーチェ (光文社新書)

座右のニーチェ (光文社新書)


そらんじることが、読書
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「わたしはただ、血をもって書かれたもののみを愛する」とニーチェはいう。血とは精神である。人の血を理解するには、ただ読書するだけでは足りない。


人は普通、ただことばを聞いたり読んだりすれば理解できると思っている。ところが、読んだ1冊から何か引用してみてくれというと、ほとんどの人は1行もそらんじることができない。ニーチェは、それは読書をする怠け者だだ、そらんじることもできないでわかったつもりになるなと叱る。私も「声を出して読むことを提唱する者」として、ニーチェのことばは非常に心強い。


暗唱できるまで読む必要はない、理解度に差はない、と考える人もいるだろう。しかし、私にいわければ、その違いはあまりにも大きい。


私は、本当のことばというものは、自分の内側にしっかりと埋め込まれた宝物のようなものであるべきだと思っている。しかもその宝物は、自在に取り出すことができなければならぬ性質のものだ。それには、繰り返しそらんじて確かなものにしなければ、本当にわかったとはいえないのだ。


記憶し、声に出して発し、そうしてことばは本当に磨かれていく。役立つ刃物のように切っ先するどくなっていく。そこではじめてことばは自分のものになったといえる。そうでなければ、それは「読んだことがある」というだけで、自分の血肉にはなっていない。


そう考えると役者という職業はおもしろい。彼らはせりふを音読して覚えたり、暗唱したりする。そらんじたときにはじめて、その役になりきることができる。シェークスピアの「ハムレット」を演じる人は、ハムレットのことばがどんどん口から出てきたときに、ハムレットの気分が乗り移ったような感覚を味わうに違いない。


これは1つの憑依の技だ。憑依現象というのは勝手に乗り移れたら怖いが、自分の身体の中に埋めておいたものが出てくるぶんには怖くない。会話の中に適切なタイミングで、たとえば坪内逍遙訳の『ハムレット』が出てくるなら、それは相当の教養の持ち主だ。


あなたにすべてのよきことが雪崩ごとく起きますように♪



今日の名言


「人 は眠っているときに記憶を整理し、脳の中で忘れにくい形態に書き換えているのです。このために、就寝直前の時間に覚えたことは、最も効率よく、しっかりと 記憶に定着できるのです。さらに、起床直後に復習しますと、睡眠中に整理された情報を長期記憶としていっそう確実に定着させることができます。ですから、 就寝直前と起床直後には、必ず同じメモに目を通すようにしてください」――吉田たかよし


今日の感想


こんにちは、ソンリッサです。


本日の1冊は、明治大学文学部教授齋藤孝さんによるニーチェ論。


そらんじること、暗唱することの重要性をニーチェは強く言っています。新聞でも、人の名前でも、聞いた話でも、意識して覚えようとしないと記憶に残りませんよね。


ただ、読む読書から、そらんじる読書へ


あなたを変える力を持っている一冊です。ぜひ一読をおすすめします。


目次


第1章 一本の矢になれ(目指すは憧れの矢
自画自賛
愛せないなら通り過ぎよ
ルサンチマンから逃れよ
嫉妬を消し去れ
友ならば敵であれ
頼りない友人ならいらない
原罪の概念を蹴飛ばせ
平等を説く者は毒ぐも
逃れよ、君の孤独の中へ)
第2章 一瞬を生きよ(瞬間を生きよ
偶然の力
これが生だったのか、よし、もう一度
最初から飛ぶばかえいでは、高くは飛べない)
第3章 肉体の声を聞け(踊る神を信じよ
肉体は本来のおのれ
大河にならねばならぬ
エネルギーの元栓を開けておけ
大地に忠実であれ)
第4章 過剰を贈れ(太陽の光
蜂蜜たれ
知恵は贈り物
祝祭の技を習得せよ
リーダーの危険は、羞恥を失うことだ
師弟関係を卒業して、友になれ
読書する怠け者)
第5章 クリエイティブに生きろ(力への意志
身体の内側から感動する力
評価というクリエイティブ
自分が回りたいから回るのだ
運命を浴するか
風を受けよ
エッジを走る人を敬え)


座右のニーチェ (光文社新書)

座右のニーチェ (光文社新書)