第727冊目 「見た目」で選ばれる人 竹内一郎/著

「見た目」で選ばれる人

「見た目」で選ばれる人

目次


プロローグ 判断は○五秒――気持ちは読まれている’
第1章 パッと見の威力第一印象が当たるわけ会う回数が多いほど好きになる一目惚れの不思議惚れた相手を見る目恋人募集広告の心理学伝達手段が便利になればなるほど「伝わらない」のにはわけがあるビジュアル全盛の欠点
第2章 三割は誤解恋人役は何となく決まる“華”のある人になれるか?挨拶がものさしだった挨拶ひとつで、自分が変わる三割が誤解して見られている“我見の見”と “離見の見”アレクサンダーの三面鏡昭
第3章“見た目”のゴール整形手術と痛々しい中年よい“鏡”を持つ「らしく」振る舞う“本当のこと”はいえない停滞と惰性を打ち破れ!司馬遼太郎大岡昇平の人間観学生のための教材がベストセラーに!眠っている才能が目覚めるとき自分が“わかる”と何が変わるか
第4章 モテ仕草の罠毒にも薬にもなる“見た目”“モテ仕草”とは何か自分の目が曇るとき言葉のない芝居五感で感じることを忘れたとき共働きと子どもの“表情”
第 5章 評価は一八○度変わる人気のない“表情”会話を盛り上げる“表情”空気を読むミラーニューロン表現は細やかかオーバーか下手くそと上手くそ人類共通の感情表現演劇の世界では常識“テレビ”の飽きさせないテクニックレンボンガン島のタケウチグラマー人の持つ“命”と“運”エビローグ オバマの大逆転――言葉をしのぐ説得力


教え子に「えこひいき」といわれて……


私が以上のような考えにいたったのには、次のような経緯がある。あるとき学生から「竹内先生は、えこひいきをしている」といわれたのである。演劇学科の教員は、卒業公演のキャスティングをする。同短大の学生は、八割から九割が女子である。演劇を専攻するぐらいだから、自意識が強い。キャスティングを発表すると必ず、「あの人より私のほうが台詞が少ないのは納得できない」という反応があるものだ。当然、感情的な言葉をぶつけてくる学生もいる。演劇を教える場合、激しい感情と向きあうのも仕事のうちである。先述の学生の言葉も「よくあることだ」と思って聞き流していた。


ところが、あるとき気づいたのである。「えこひいきの根拠は挨拶にあったのだ」と。


私は、大学の教員以外に執筆の仕事も多い。アイデアが湧かなくて、苦しんでいる時間も長い。そういうときには、廊下を歩くときにも学生と目をあわせないものだ。いちいち学生に話しかけられると、まるまるアイデアもまとまらなくなる。


しかし、普段の私はラテン的な性格だから、学生ともよくしゃべる。廊下を歩くときも、元気よく挨拶をする。演劇人らしく、声もよく通るし、相手の目もきちんと見る。


ということは……。


私自身に「えこひいき」をしているつもりはない。だが、学生たちから見れば、「竹内先生は、私が挨拶をしたときは無視したのに、ほかの学生のときにはちゃんと挨拶を返している」となることに気づいたのである。


私は心を入れ替えた。学生の前では、陽気なときと、原稿で煮詰まっているときの、態度の差をつけてはならない、と。そのためには学校にいるあいだは、原稿のことは考えないことだ。少なくとも、研究室を一歩出れば、頭のてっぺんから足の爪先まで、作家としての自分は忘れて、すべて教員として振る舞うことに決めた。簡単にいうと演技をするのである。


廊下で学生とすれ違うときには、先生として相応しい表情で、声のトーンで、一定のアイコンタクトで、挨拶をする。毎日それができているか、自分チェックしながら歩く。やがて、それが自分としても自然な感覚になってくる。一言でいうと慣れてくるのである。挨拶をきっかけにして、やがては私はバランスのよい精神状態で学生たちとつきあう感覚を手に入れられた。〝先生という演技〟に自分を変える効果があることに気づいたのである。


あなたに、すべての良きことが、なだれのごとく起きますように♪


今日の声に出したい言葉


「人間というものは、往々にして小さな鳥と同じように行動するものである。つまり、眼前の獲物にだけ注意を奪われていて、鷹や鷲が頭上から襲いかかろうとしているのに気がつかない、小鳥のように」――マキャベリ


 

編集後記




小泉進次郎さんの声の大きさ、トーン、間の使い方が絶妙ですね。


低く響きのよい声で男の私でも惚れ惚れしてしまいます。


私も小泉進次郎さんのように話せるように、毎日シャドーイングします。


タダで動画や音楽が見たり聞けたり、すごい時代になりました。

「見た目」で選ばれる人

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