第623冊目 人の心を動かす文章術 樋口裕一/著
- 作者: 樋口裕一
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2004/03/23
- メディア: 単行本
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目次
第1章 文章を書くのはテクニックである
第2章 人とちがった文章が面白い
第3章 文章の型を利用する
第4章 書き出しで読み手を引きつける
第5章 リアリティを作りだす
第6章 描写したり、形容したりする楽しさ
第7章 リズムのいい文体、メリハリのある文体
第8章 ドラマを真似して盛り上げる
第9章 主題に絞り込む
第10章 推敲する
「ちょっぴり悪い心」を書き入れる
リアリティを感じさせる奥の手として、ちょっぴり「悪い心」を見せるというテクテックがある。きれいごとに終始するのでは、リアリティは出せない。きれいごとというのは、いわば建前であるから、いくらきれいごとを書いても、読み手はしらじらしさしか感じない。世の中には、他人の幸せを願い、自分がほかの人の引き立て役になってもよいと思っている人などそうそうにいないものだ。
したがって、とろろどころに、きれいごとではない、「悪い心」を見せるのが、リアリティを感じさせるうまい手だ。たとえば、「ちょっぴり嫉妬を感じたが、それを抑えて、おめでとうを言った」とするほうが、「友人がグランプリをとって、私もうれしかった」と書くよりも読み手は真実を感じさせるできる。
ただし、あまりに「悪い心」では、読み手は感情を移入できない。たとえば、「殺気を感じた」「ひどくいじめてやりたいと思った」などと書くと、読み手はしらけてしまう。誰でも感じるような、しかし、あえて口に出さないような「ちょっぴり悪い心」を書くとよい。
「悪い心」を見せながら、それにきれいごとをまぜると、そのきれいごとにもリアリティが感じられるようになる。たとえば、「ちょっぴり嫉妬を感じたが、それを抑えて、おめでようを言った」と友人に嫉妬を覚える自分を示したあとで、「しかし、彼女がいま恵まれた境遇にいることが、私の自分のことのようにうれしかった」と書くと、それが真実味を帯びるわけだ。
林真理子氏はいうまでもなくきれいごこをいわずに本音を語ろうとするスタイルをとるエッセイストだ。だから、文章のしばしばに、よい子ではない感想をしのばせる。文章全体が、よい子でない意見や感想から成り立っているといってもいいだろう。
「私の住む原宿はクリーニング代が高くて、ブラウス1枚もバカにならない。できるだけ汚さないようにという。ケチな心も動く」「エレベーターの中で2人きりになるやいなや、彼の手がいきなり私の胸にのびる。ドキッ」などは、少しケチで、男に言い寄られるとことをちょっぴり期待している女心をされけ出して、リアリティを作り出している。
あなたにすべてのよきことが雪崩ごとく起きますように♪
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今日の声に出したいコトバ
「男性は女性作家のエッセイや小説を、女性は男性作家のそれを、読んでみるのも面白いと思います」――和田裕美
感想
いつも簡潔にまとめられたビジネス書ばかり読んでいるので、私の話し方はそういう話し方になっているかもしれません。普段まったく読まない、女性作家のエッセイや小説も挑戦してみます。
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