第3955冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

 

-相互無批判的体質

 

これは、いいかれば「見て見ぬふり」の体質を指す。不適切な働き方をする職員がいる。その事実を他の職員も把握しているのに、誰も注意せずに放置している。この状況が当たり前になると、どうなるか。不適切な行動を示す職員の言動はさらにエスカレートし、権利侵害と指摘されるような言動まで発展する。

 

恐いのは、当初は少数の職員から始まった不適切な働き方が、他の職員にも“伝染”してしまう点だ。知らず知らずのうちに、不適切な業務スタイルが組織全体に広がっていく。多くの職員が相互無批判にどっぷりと浸かると、もう誰も止められなくなる。たとえ、上級管理職であっても、容易に口が出せなくなる。集団が反発される事態が想定されるためだ。

 

こうした事業所に就職してくる職員は、極めてつらい経験をする。不適切な業務を繰り返す職員を見て愕然として、就職の際にはもっていた福祉の仕事に対する期待感は、一気に雲散霧消する。夢破れて、短期間に職場を去る決意をする。

 

残った人のその後の職業人としての人生も、前途多難だ。この職場で生き残る手立ては二つしかない。一つは徹底的に闘いその体質を打ち破る。残念ながら、新任職員がこのチョイスを選び、勝ち残るケースはほとんどいない。多勢に無勢で力及ばず、打ち負かされてしまう。もう一つの手立ては、軍門に下ることだ。不適切な業務に手を染める先輩集団の仲間入りを果たすとどうなるか。今度は自分が新らたに就職してきた職員に圧力をかける立場になる。職場を去るか、軍門に降るかを迫る張本人と化してしまう。