第3954冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

 

-あなたの職場は停滞の罠に陥っていないか

 

福祉の職場には残念な共通の特徴がある。「このままではいけない」という危機意識が希薄な組織状況となり、停滞の罠に陥ってしまいやすいという特徴である。

 

その傾向が目立つのは、居住型福祉サービスの事業所だ。例えば、特別養護老人ホームや入所型の障碍者施設などの場合は、多くの人が、“入居待ち”の状態になっている。ちょっと油断すれば、お客様が来なくなり、一気に経営危機に陥ってしまうという経営環境ではない。他の業界と比べれば、競争原理が働きにくいし、お客様の厳しい選別の眼にさらされる事態も発生しにくい。

 

こうした“売り手市場”の環境は、そこで働く職員の危機感を鈍らせる。「まぁ、これでいいだろう」と油断し、問題が直視できなくなる。危機意識が欠落すると、業務改善に向けた取り組みにも消極的になる。管理監督者の立場にある人が、改善を働きかけても、職員たちはどこ吹く風。強く改善を要求すれば、「そんなことはムリです!」「現場のこともわからないくせに!」などと、逆襲に遭うこともある。結果的に、問題は手つかずのまま放置される。こうなれば、もう組織は目も当たられない状態となる。停滞の罠にどっぷりとはまり、抜け出せなくなってしまう。

 

さて、あなたの職場はどうだろうか。この残念な特徴を示していないだろうか。確認は難しくない。過去五年間(あるいは三年間)、あなたの働く職員がどのような変化を遂げてきたか、どのような課題を克服してきたか、どのような業務改善に取り組み、成果を遂げてきたかを振り返れば把握できる。

 

もしあなたの職場が、着実にレベルアップが図れている状況にあれば、安心だ。成長し続ける職場として、今後もさらなる進化を遂げていく可能性が高い。もうすでに、あなたの職場には、頼れるリーダーが存在している。職場をさらゆる方向に導くためのリーダーシップが十分に発揮されている。それが業務レベルの向上という成果を生み出す最大の要因となっている。

 

なぜ、そういえるのか。業務レベルの向上は、チームや組織内で、健全な危機意識をはぐくみ、あるべき方向を示してくれるリーダーがいなければ、成し遂げなれないからだ。