第3593冊目「権力」を握る人の法 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

 

 

 

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

 

 

 

-電光石火で動く

 

 

「先んずれば人を制す」の格言通り、機敏に動けば勝利を手にする確率は高まる。油断した敵は、何が起きたかさえ気づかないうちに敗北することになる。インド・クリケット協会では、まさにそれが起きた。二〇〇五年に会長選挙があったとき、現職だったジャグモハン・ダルミヤは再選をめざし立候補する。ところがモディがラジャスタン・クリケット連盟の代表として忽然と現れ、弁護士を雇いクリケット協会の腐敗と放送経営を指摘し、反ダルミヤ運動を大々的に展開したのだ。「再選を確信していたダルミヤは、自分の追放運動が起きたことに愕然とした。彼にとっては寝耳に水の出来事だった」。かくしてモディの協力者が会長に選ばれ、モディは副会長に収まる。すぐさまモディは反対派を一掃するとともに、テレビ放映権やグッズのスポンサー権を高額で売り、協会の資金源を一気に増やして経済的自立を実現。自分の力をまざまざと見せつけた。

 

 

この種の権力抗争、昔から取締役会とCEOの暗闘で繰り広げられている。CEOが機先を制し取締役会内部の反対分子を追放することができれば、首は安堵である。逆にCEOが休暇を取ったり、他のことに忙殺されている隙に取締役会を招集して更迭を決めてしまえば、CEOはぐうの音も出ない。自分の地位が危ういときに傍観してはいけない。油断をしていると敵は援軍を増やし、包囲網を固めてあなたを敗北に追いやるだろう。