第3552冊目 入社1年目の教科書 岩瀬大輔(著)

 

 

入社1年目の教科書

入社1年目の教科書

 

 

 

-仕事は盗んで、真似るもの

 

 

多くの企業の教育制度、研修制度は現在、非常に充実しています。

 

 

その恩恵に与っていると、仕事は教えてもらうものだという受け身の姿勢が身についてしまうのはやむを得ないことかもしれません。でも、勘違いしないでください。仕事について教室や研修で教えられることは、限られているのです。

 

 

新入社員のころ、僕は常に先輩の横にくっつくようにしていました。お客さまへの質問の仕方、メモの取り方など、すべてを真似しようと考えたからです。

 

 

上司や先輩に頼んで、普段見られない場所に連れていってもらうことは、得難い経験になるとお話しました。僕が強調したいのは、そこで見聞きしたことを真似て、自分の中に取り組むことです。仕事は真似ること、盗むことでしか身につかないと言っても、決して言い過ぎではないと思います。

 

 

もちろん、人それぞれのスタイルがありますから、すべてのことを真似する必要はありませんん。自分が良いと思ったこと、自分に合ったスタイルを見つけたら、積極的に真似していけばいいのです。

 

 

最初の会社で一緒に仕事をした矢吹さんは、何でも数字に換算しながら仕事をする方でした。定性的なことも、すべて数字に落とし込んでいくのです。徹底してロジックを積み上げていくと、説得力が増すということを学び、そのスタイルを真似しました。

 

 

同じくボストン・コンサルティング・グループで別の上司だった御立さんは、タクシーから降りるときには必ず運転手さんに丁寧に声をかけ、頭を下げていました。

 

 

「偉い人は、そういう気配りを大切なのか」

 

 

御立さんの気配りする姿を忘れられず、いまは僕もそうしています。運転手さんに対して彼が横柄な態度を取っていたら、運転手さんに「お疲れ様でした」とお礼を言う習慣は、身についていなかったかもしれません。

 

 

リップウッド・ホールディングス時代の上司は、とにかく相手を注意深く観察する人でした。交渉の席でも食事の席でも、穴のあくほど相手を見るのです。相手の心理や癖を見抜き、ビジネスの活かす彼の姿から、観察力を磨く大切さを学びました。