第3499冊目  FBI捜査官が教える第一印象」の心理学 ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター   (著), 西田 美緒子 (翻訳)

 

 

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

 

 

 

私はラスベガスのセミナーで教える機会が多く、ホテルの駐車係として働いている驚異的な男性と友だちになった。彼は一日に最低でも三〇〇ドルから五〇〇ドルの収入を得ている――もちろん、車を駐車場に入れるだけの仕事で。私はある日彼に、どうやってほかの係員よりそんなにたくさん稼いでいるのかと訊いてみた。簡単に言うと、彼の話は次のようなものだった。

 

 

いつも靴をきれいにしておくように気をつけています。私の靴跡がマットに残っているのを見たいお客さんはいませんからね。それから、いつも額の汗を拭いています。私の汗がついていいと思うお客さんはいませんからね。ほかのみんなはシャツのボタンを外していますが、私はいつも、どんなに暑くても、シャツのボタンをしっかりはめるようにしています。胸毛を見たいお客さんはいませんからね。お客さんが車のキーを手渡してくれたら、全速力で走って車をとりにいきます――そうすれば、お客さんの時間のことを気にかけているとわかってもらえますからね。車を運んだら、ドアを開けながらシフトレバーとハンドルをセーム皮でひと拭きし、指紋が残らないようにします。そして最後にはいつも、「お気をつけて」と声をかけます。

 

 

この男は、顧客にとって最も重要なことに注意を払って、自分の仕事を新しいレベルに引き上げた。それは、全体としての外見、仕事ぶり、話す言葉だ。このなかに、「あなたが大事だと思っていることは、私にとっても大事です」と伝えるノンバーバルがいくつあるか考えてほしい。客は手にチップのコインを握って待っていても、この男が車を降りながらハンドルを拭いているのに気付くと、またポケットを探ってチップを増やす。私はそんな場面を何度となく見てきた。こんな小さな努力に、これほど大きな報酬がある。成功のノンバーバルは大企業のエリートだけのものではない。私たちみんなのものだ。礼儀正しさが私たちみんなのものであるのと同じように。