第3410超訳 孫子の兵法 「最後に勝つ人」の絶対ルール (知的生きかた文庫) 田口 佳史   (著)

 

 

 

 

-「アメとムチ」の人心掌握術

 

 

まだ人間関係ができていないうちは、何かまずいことをやっても処罰しないほうがいい。反発して、よけいに言うことを聞かなくなるからだ。逆に親しい関係ができているなら、甘やかしてはいけない。ナメられるからだ。

 

 

よく言われるように、下の者を指導・育成するにはアメとムチが必要です。ただしただ交互に使えばよいというものではありません。孫子はこれを、人間関係のなかで捉えています。

 

 

たとえば新しい部下がついたとして、いきなり「たるんでるぞ!」「言うことが聞けないなら、もう会社に来るな!」などと厳しく叱りつけてはいけません。最初に威厳を示しておかなくてはと思うかもしれませんが、これは逆効果です。

 

 

まだ互いのことがわかっていない、疑心暗鬼の状態ですから、部下はいきなりムチを食らうと不快になります。「何だよ、ずいぶん高圧的なんだな」と反発するか、「嫌われているのかな」と不安になるか。いずれにせよ、上司と距離を置こうとするでしょう。そんな状態で、上司の言うことを聞くはずがありません。

 

 

まず良好な関係を築くことが大事なのです。

 

 

逆に親しい関係ができたときは、甘やかしてはいけません。馴れ合いから部下は「ちょっとくらいさぼっても叱られないだろう」と上司をナメるようになるからです。ミスをしたり、命令を聞かなかったりしたときは、ちゃんとムチを打つことが必要です。

 

 

若い者を指導する立場の人は、愛情をかけて彼らを教え導きながら、褒めるときは褒め、叱るときは叱る。

 

 

平素からそんなふうに部下と接していれば、心を一つにして事を進めることができるでしょう。