第3381 冊 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

 

 

 

 

第三に、想像力を刺激するからである。問題を解決するには、想像力は必要ないとの説がある。だが、それは数字の世界だけである。政治、経済、社会、軍事のいずれであろうとも、不確実な問題においては、新しい状況をつくり出すような創造的な答えが必要である。想像力、すなわち知覚と理解が必要である。第一級の想像力は潤沢にはない。とはいっても、一般に考えられているほど稀なわけでもない。しかし想像力は、刺激しなければ隠れていて使われないままになる。反対意見、特に理論づけられ、検討し尽くされ、かつ裏づけられている反対意見こそ、想像力にとってのもっとも効果的な刺激剤となる。

 

 

成果をあげる者は、意図的に意見の不一致をつくりあげる。そうすることによって、もっともらしいが間違っている意見や、不完全な意見によってだまされることを防ぐ。選択を行い、決定を行えるようにする。決定の実施の段階で、その意思決定に欠陥があったり、間違ったりしていることが明らかになっても、途方に暮れることはない。さらに、自分だけでなく、同僚たちの想像力も引き出してくれる。

 

 

意見の不一致は、もっともらしい決定を正しい決定に変え、正しい決定を優れた決定に変える。一つの行動だけが正しく、他の行動はすべて間違っているという仮説からスタートしてはならない。「自分は正しく、彼は間違っている」という仮説からスタートしてはならない。そして、意見の不一致の原因は必ず突き止めるとう決意からスタートしなければならない。

 

もちろん、ばかな人もいれば、無用の対立をあおるだけの人もいることは、承知しておかなければならない。だが、明白でわかりきったことに反対する人は、ばかか悪者に違いないと思ってはならない。反証がないかぎり、反対する者も知的で公正であると仮定しなければならない。

 

 

明らかに間違った結論に達している人は、自分とは違う現実を見、違う問題に気づいているに違いないと考える必要がある。「もし彼の意見が、知的で合理的であると仮定するならば、いったい彼は、どのような現実を見ているのか」と考えるべきである。

 

 

成果をあげる人は、何よりもまず、問題の理解に関心をもつ。誰もが正しく、誰が間違っているかなどは問題ではない。