第2905目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • セルフ・コンパッション


ヘレンは文句なしに聡明な女性だ。説得力のある力強い議論を組み立てられる、信頼できる良き聞き手という評判で、人の言うことを真剣に聞く。ただし、カリスマ的ではなく、本人もそれは自覚している。「私はおもしろい人間で、いい聞き手であり、話し上手よ。でも、好感を抱かれる人間ではないし、カリスマでは決してない」


ヘレンは自信にあふれている。いったい彼女に何が足りないのか――誠意だ。人々は彼女が何でも知っていると感心するが、彼女が相手のことを気にかけているとは感じない。他人にも自分にもなかなか思いやりをもてないヘレンは、誠意を発散することができなかったのだ。むしろ、彼女は基本的にどこか疎外感を覚えていた。私が初めて会ったとき、彼女は自分の疑問を率直にぶつけてきた。「私のことを好きな人がいるのが不思議なくらい。自分でお好かれる性格だと思わないのに」。言うまでもなく、ヘレンの頭の中でこだましている冷淡なメッセージは、彼女のボディランゲージに表れ、彼女が発散させる誠意を限定している。


ヘレンにとって、カリスマを高める方法は「自分に誠意を持つ」ことだ。これまで説明してきた誠意は、他人や社会に対する外向きの誠意だ。しかし、誠意は自分に対して内向きに示すこともできる。心理学では「セルフ・コンパッション」(自己への思いやり)」と呼ばれるもので、不自然に感じるかもしれないが、人生を変えるくらい影響力があり、カリスマを確実に高める。