第2918目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 優しさのカリスマ――誠意と自信


あなたが生まれた直後は、何をやっても親はわが子を完ぺきだと思う。しかし生後数ヵ月が経つと、受容は条件付きになる。もう少しおおきくなると、ニンジンを残さず食べてにっこりと笑わなければ、祖母に褒めてもらえない。誰からも例外なく無条件で受け入れられた貴重な感覚は、もうなかなか経験できない(経験できるとすれば、恋が始まった直後くらいだろう)。


ダライ・ラマが大きな影響力を持つ理由のひとつは、とてつもない量の誠意と完ぺきな受容を伝える能力があるからだ。自分が完全に受けられたという感覚を経験したことがない人も、ダライ・ラマに会えば包み込まれていると感じる。これこそ優しさのカリスマだ。


優しさのカリスマは、主に誠意にもとづく。他人の心と結びつき、彼らが歓迎され、愛され、抱きしめられていると感じさせ、何よりも完全に受け入れられていると感じさせる。


集中力のカリスマはやビジョンのあるカリスマと同じように、優しさのカリスマもボディランゲージだけで伝わる。とくに顔の表情、なかでも目が大切だ。


ダライ・ラマのような魔法の魅力を放つ方法は学んで身につけられるが、そのためには積極的な気持ちと忍耐力と訓練、そして適切なツールが必要となる。まずは、心の状態を整えよう。5章で説明した感謝、思いやり、セルフ・コンパッションなど、精神的なツールを使って誠意を持てるように練習をする。9章では、顔の表情とボディランゲージと振る舞いをとおして誠意を伝える方法と、適切なアイコンタクトを学ぶ。


優しさのカリスマに誠意が占める比重はかなり高いので、緊張や批判、冷淡さにつながるボディランゲージは、すべて避けなければならない。4章で、学んだ精神的および肉体的な不快感をコントロールする内面のテクニックが、ここで威力を発揮するだろう。


優しさのカリスマの基本は誠意だが、パワーを伴わなければ、相手を喜ばせたいという押しつけがましい印象を与えかねない。そこで、ほんの少しパワーを伝える能力が重要になる。


優しさのカリスマのふさわしい精神状態には、5章で学んだテクニック(イメージトレーニング、体が心を変える、準備運動)が役に立つだろう。ボディランゲージで誠意とパワーのバランスを取ることについては9章で説明する。


優しさのカリスマは代償を伴う。私の親友は優しさのカリスマがあふれんばかりで、行く先々で人を魅了する。オフィスの同僚もスーパーのレジ係も、彼女がそばにいると、自分は受け入れられ、思いやりを注がれていると感じる。もちろん素晴らしいことだが、彼女にとっては重荷でもある。彼女の人生に、彼女に魅了された人々を受け入れる余裕がないと、彼らは傷ついたり恨みを抱いたりする。それが彼女の苦しみとなり、罪悪感となる。これは優しさのカリスマの短所のひとつで、周囲にへつらいの気持ちを抱かせ、過剰な愛情につながりかねない。こうした「副作用」を防いでカリスマにふさわしい人生を送るためのコツは13章で学ぶ。


優しさのカリスマは、感情的な絆を結びたいときや、人々に安心と居心地の良さを与えたいときはいつでも役に立つ。また、悪い知らせを伝えるときも、優しさのカリスマがカギを握る。難しい人を相手にする際も驚くほど効果的だ。ただし、集中力のカリスマと同じように、権威を示さなければならないときや、人々が気を許しすぎて多くの感情を共有するような場面では、使わないほうが賢明だ。