第2834冊目 その話し方では軽すぎます! 矢野 香
その話し方では軽すぎます! エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』
- 作者: 矢野香
- 出版社/メーカー: すばる舎
- 発売日: 2012/03/07
- メディア: 単行本
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- 「マナーロボット」にならない
「なんだか、不自然だな」
スピーチを聴いているとき、こんなふうに感じたことはありませんか。
不自然さの本質は、マナーの行きすぎです。
こんなクライアントさんがいらっしゃいました。
四十代の女性の社長さんで、美人で見た目も若い。スピーチのトレーニングにいらっしゃたので、自己紹介をしていただきました。すると、話す丹亜要は論理的でわかりやすく、声も聞きやすく非の打ちどころがありませんでした。
しかし、どこか違和感を感じます。何かが不自然で、聞いていて疲れるのです。そこで、彼女のスピーチをビデオに撮影し、細かくチェックしてみました。
すると、三分ほどのスピーチの間、彼女の表情は完璧な笑顔のまま変化がなかったのです。笑顔の消し忘れです。
さらに、手をお腹の前あたりできちんと組み合わせたまま動きません。話ながらジェスチャーをした後も、手はその定位置に戻ってきます。背筋がピンと伸び、肘はきれいに90度で曲がり、腰と腕の隙間が正三角形になっています。
そう、まるで人間味がなく、ロボットのようなのです。
伺ってみると、礼法の師範資格を持っていらっしゃるほどマナーに気を配っている方でした。ずっと腕や顔、全身に力が入り、抜けていなのです。だから、聞いているほうも疲れるのです。
マナーを意識するのは大事ですが、行き過ぎると、マナーロボットになってしまいます。話し手がかしこまり力を入れ続けていたのでは、相手も緊張し、心を開いてくれません。これでは話がなかなか伝わりません。
大事なのはメリハリです。押さえるべきところはスピーチの最初と最後。話をしている最中は、多少、マナーを崩したぐらいのほうが、話が聞き手に伝わりやすくなります。
熱弁していると、自然と前傾の姿勢になるため背筋が曲がります。情況を描写するよに話していれば、話の内容に合わせて表情はくるくると変わり、笑顔だけではなくなくなります。伝えることを意識すればするほど、マナーどころではなくなるのです。
度を越した笑顔とマナーは演技のしすぎにつながります。逆に信頼を損ねていないか点検してみてください。スピーチが得意だと思っている方、人前で話すのが上手になってきたのではと思いはじめた方、そういう方こそ要注意ですよ。