第2833冊目 その話し方では軽すぎます! 矢野 香


その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』

その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』

  • 「笑顔の消し忘れ」をしない


過剰な笑顔の演技は、「笑顔の消し忘れをしている」といことです。人前では笑顔で、という心構えは素晴らしいことです。しかし、つねに笑顔のスイッチを入れたままにしていませんか。


この笑顔スイッチは、私もつい最近までやってしまっていた過ちでした。とある方から指摘されて気がついたのです。その方は、数々の著名人のブランディングを手がけたプロデューサーで、人の特徴や性格、強みを瞬時に見抜く力をお持ちです。初対面で会ったときにこう言われました。


「矢野さんって、口にいつも力が入っているよね」


私が「え」と驚いた顔をすると、「ほら、その顔にも口に力が入っているよ」と指摘され、手で口を触ってみましたが、よく意味がわかりません。気になったので、それからしばらく、いろんな人の口元を観察し続け、自分の口と比較してみたのです。


そして、気がついたのが、笑顔を消し忘れている自分の口でした。


これは男女問わずやってしまっている無意識の口で、私たちアナウンサーをはじめ、接客や営業の方に多く見られる傾向です。しかも、苦手ではなくて、ある程度キャリアを積んだ人たちが、笑顔でいることがクセになって、取れなくなってしまっているのです。


上の白い歯を8本見せた完璧な笑顔が顔にはりついたまま消えない。糊を使って歯に唇を固定しているのではないか、と思うほど笑顔が続く方もいます。話すときも笑顔、相手の話を聞くこときも笑顔。いつ見ても笑顔、笑顔、笑顔……。


そこには、完全に意図的な演技性を感じます。般若の面のような迫力すら感じることもあります。


一度しか会わない相手であれば、笑顔がある人、として好感を持ってくれるでしょう。一期一会の接客ならそれでよいのです。


しかし、何度も会う相手であれば、会う度にいつも同じような完璧な笑顔を浮かべていたのでは、相手はその笑顔を疑い始めます。


「この笑顔は心からのものではないな」「この人は腹ではどう思っているかわからないぞ」と警戒心を持ち、あなたの言動を信じてくれなくなるのです。つまり、良かれと思ってやっている笑顔が、反対に相手を遠ざけているのです。


四六時中笑顔でいると、「へらへらして何も考えていないような軽い人」と思われるか、または、「心を許せない腹黒い人」と、思われてしまいます。


そうならないために、笑顔を出したら消しましょう。