第2764冊目 人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)  谷原 誠 (著)


人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

  • 必ず成果を得たい時の、質問三段構え


昔話の「鶴の恩返し」は、命を助けてもらった鶴が、そのお返しに機織りをして恩返しをしようとする物語であり、私たちは幼少の頃から親しんでいます。私たちも、誰かに何か恩を受けたら、そのお返しをしなければならない気になりますし、またそのような教育を受けてきました。人間関係のバランスを保つためです。このように、他人が自分に何かをもらったら、そのお返しをしなくてはならない気になることを、「返報性の法則」と言います。


この返報性の法則は、日常生活のあらゆる場面で見ることができます。年賀状をもらったら、同じく年賀状を返し、間に合わなければ寒中見舞いでお返しをする、というのもこれです。返事を書いていない場合、次に会った時に「せっかく年賀状を頂戴したのに、お返事しなくてすみません」などとわざわざ謝ってしまう人もいます。誕生日のプレゼントに女性から男性にチョコレートをあげると、男性は、何が起ころうともホワイトデーにお返しをしようとします。お通夜、葬式の際に香典をいただいたら、必ず香典返しをするのもこの返報性の法則が社会常識にまでなった例です。


この法則はビジネスでも利用されています。スーパーの試食は、笑顔の販売員が無料で飲食物を通りすがりのお客様に提供しています。それもらって試食をし、爪楊枝と皿を返しただけで立ち去るのは少し心苦しい気がします。つい少しでも購入した方がよいのでは? という気になってしまいます。商品を売り込むことなしに、頻繁に会社に顔を出して、有益な情報や小さなプレゼントを持ってくる営業マンにはついつい注文しなくなってしまいます。


この返報性の法則の利用して、相手をその気にさせましょう。そのためには、相手に対して依頼の質問をする前に、相手に何かを与えるのです。与えるものは、相手の喜ぶものである必要はありません。ハンカチでもキャンディでも、有益な情報でも、なんでもよいのです。何かを与えた途端、相手は、あなたに対して何かをお返ししなければならない立場に立つことになります。そこで、依頼の質問を繰り出すのです。