第2763冊目 人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)  谷原 誠 (著)


人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

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  • 私もアダムも逆らえなかった希少価値の法則


私が弁護士になった後、賃貸マンションを探していたときの話です。都心である程度のハイグレードなマンションを探しており、少し気に入ったマンションがありました。しかし、私は「もっと良いマンションがあるのではないか」と考えており、また別の日にマンションを見せてくれるように不動産会社の社員に言いました。


すると、不動産会社の社員は「かしこまりました。でも、この○○マンションシリーズは、とても人気があって、すぐに借りてが見つかってしまいます。このお部屋はご契約なさられないということでよろしいですね?」と言いました。


私は、その瞬間、とても不安になりました。他のマンションを見たいものの、このマンションを失うことが怖くなったのです。私は考えました。


「これ以上いいマンションは出てこないかもしれない。他のマンションを見ているうちに、他の人がこのマンションに決めてしまったら、このマンションに住む機会を失ってしまう。せっかく良いマンションなのに、それではもったいないし、後で後悔するかもしれないぞ」


そして、私は、いてもたってもいられなくなり、その場で賃貸マンションの契約を申し込み、そのマンションに住むことになりました。不動産会社の社員が言ったことが本当かハッタリかはわかりません。また、他に良いマンションがあったかどうかは、今となってはわかりません。しかし、私は失う恐怖から、急にそのマンションが価値あるものに思えきて、契約をしてしまったのです。


このように、少なくなったり、なくなってしまったりするものほど価値があるもののように感じてしまう心理を「希少価値の法則」と言います。前に書いたように、私は、学生時代に賃貸アパートを探しているときには「誤導質問」にひかっかり、弁護士になってからも「希少価値の法則」にひっかかって賃貸契約を結んでしまったのです。