第2761冊目 人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)  谷原 誠 (著)


人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

  • 誤導質問〜知らない間に肯定させる禁断の技術


ダメな質問の7つのパターンで、「誤導質問」を取り上げましたが、誤導質問の持つ強力なパワーを使って、人をその気にさせることができます。ここで復習しておきますが、誤導質問というのは、質問の前提に誤った事実を挿入することによって、自分の意図した証言を引きだそうというものです。誤導質問とは、たとえば次のような質問です。


弁護士「この商品がなぜ評判がよいのか、証人は知っていますか?」
相手弁護士「異議あり! 誤導質問です。この商品の評判がよいことは証明されていません。それ自体が本件の裁判の争点となっているものです」


この質問は、「証人は知っているか?」という質問ですが、知っている対象は、「この商品の評判がよい理由」であり、商品の評判がよいことが前提となって組み立てられた質問です。証人が「はい」と答えれば当然商品がよいことになるし、「いいえ」と答えても、「商品の評判はよいが、証人はその理由を知らないだけ」という結論となってしまいます。したがって、このような誤導質問は、誤った結論を導いてしまう強力なテクニックとして、裁判では禁止されているのです。


本当は、「この商品に関して、よい評判を聞いたことがありますか?」と聞いて「イエス」と答えた場合に、はじめて先ほどの質問をしなければならないのです。


このように、裁判で禁止されている誤導質問ですが、いくら裁判で禁止されていても、実生活では禁止されていませんし、有効に使うことができます。


私がまんまと誤導質問にひっかかってしまった経験をお話します。私は愛知県で生まれ育ったのですが、大学からは東京で生活することになりました。愛知県から東京に出てきて、自分でアパートを探していたのですが、そこで不動産業者から2つの物件を見せられました。物件を見た帰り、不動産業者のおじさんは、私に質問しました。


「今見た2つの物件のうち、どっちにする?」


実は、私はこのとき全く別のことを考えていたのですが、この質問をされたことにより、何か2つの物件のどちらかを選ばなければならないような気がしてきて、「後で見た物件の方がいいと思います」と答えてしまいました。すると、不動産業者のおじさんは、「じゃあ、そっちにしようか」と言って、話をどんどん進めてしまいました。その結果、私は学校からかなり離れたアパートに住むハメになってしまったのです。